神さまありがとう第1回

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第一話 大金家に誕生


 わたしは生まれは東京、育ちはほとんど茨城です。一時新潟県に住んでいた時もありました。両親は熱烈な恋愛結婚だったようです。親の反対を押し切って駆け落ちしたものの、わたしが母のおなかにできた頃は、すでに夫婦の仲は冷め切っていたらしいことは母の言葉から推測できました。

 わたしは母から「お前がおなかにできたせいであの男(私の父)と離婚できなかった。おまえのせいでわたしは不幸になったんだ。おまえは疫病神だ。」と言われて過ごしました。5つ下の妹は母の愛情を独占して、ことあるごとに差別されました。

 父からは「おまえはわれわれ夫婦の失敗作品だ。わたしなりの理想があったのに。」と言われました。

 幼稚園に入る前から小学校2~3年生までの思い出で残っているのは、つまみあい、殴り合い、ののしりあいを繰り返す両親の姿と母から受けた暴力です。

 わたしは小学校の2~3年生くらいまで、おねしょがあったこと。つめをかむ癖があったことを覚えています。おねしょをすると、母は鬼のような形相になり、わたしの服を剥ぎ取って丸裸にすると、真冬の猛吹雪の中でも、たたきつける雨の中でも、北風が体に突き刺すような朝であろうとも、お構いなしにわたしを屋外へ放り出し、なかなか家に入れてくれませんでした。

 もしかしたらほんの数分だったのかもしれないけれど、わたしにはとても長い時間に思えました。「寒いよ、入れてよー!」と泣き叫び、戸をたたいても入れてくれません。

 やっと中へ入れてくれたと思いきや、わたしの髪をわしづかみにして、部屋中をぶんぶん振り回してから壁へ思いっきり投げつけるというのが毎朝繰り返される我が家の"儀式"でした。

 頭にズシーンと響く痛みと共に襲ってくる強烈な眠気、意識が遠のく中で母の背中が・・・。目が覚めてみると、母はすすり泣いていました。

 父はわたしが生まれてすぐに交通事故で身体障害者となった事がきっかけで、まったく働こうとしないどころかばくちにおぼれている有様でしたから、母が水商売をしながら生計をたてていたのです。その貴重な生活費を父はばくちにつぎ込んでいたようです。

 あるとき母が布団でわたしの口をふさぎながら「くたばれ!とっとと死ね!まだ死なねーか!とっとと死ね!」と叫びました。その直後に「わー!」と泣きじゃくる母。

 あるときは私の髪をわしづかみにして風呂場へつれていき、「とっとと死ね!早く死ね!」といいながら、わたしの頭を何度も何度も風呂桶の水の中に沈めました。その時の水の音が「じゃぶじゃぶ・・・」と今でも耳に残っています。

 もしかしたらこのせいかも・・・。大人になってからも、ひとりでシャワーを浴びる時と、トイレで水を流す時に「ジャーっ」と勢いよく流れる水音が聞こえたとたん"殺される!"という恐怖心が全身を包むのです。だから水は嫌い。

 父は見て見ぬふり。

 誰も助けてくれない、お風呂も数ヶ月入れてもらえません。ただ、ごはんは「えさだ、食え!」といって食べさせてはくれました。学校へ行くと『汚い』『くさい』といわれ、ついたあだ名は「大腸菌」。

 たびたび担任の先生と見たことのない「大人の男の人」が数人、我が家へ訪ねて来ることがありました。そして母となにやら話をしていました。それからその「男の人」が時々来るようになり、そのたびに母は上機嫌でした。

 そうしてわたしへの暴力も徐々に減って行きました。もしかしたら民生委員?か教育委員?の人だったのかな・・・。

 豪農の娘として何不自由なく育った母が、父のばくちに悩まされ、ぴーぴーなく幼子を抱えて一家を支えるのは確かに大変だったでしょう。しかも乳飲み子を抱えている時に頼りの父は身体障害者。父には右腕がありません。気落ちし、まったく働く意欲を無くしてしまった父を献身的に支えたのは母です。

 しかし父はわがままであまりに幼い人だったんですね。お金少しずつ貯まってきて生活にゆとりができたとたん、娘のような愛人に子供を生ませ、母はあっけなく捨てられました。父と一緒に暮らすようになってから、愛人も母のように奴隷のようにこき使われていました。

 これが、幼い頃のわたしの記憶に残っている思い出です。

 今は笑って話せるけれど、小学校2年生くらいの時にはすでに自殺を考えていました。近くにあった踏み切りに飛び込めば、怖い母から開放されると幼心によく考えました。

 でもこの悲しい思い出もすばらしい神様からの贈り物だったのです。なぜ?なぜでしょうね。

 なぜすばらしい贈り物といえるのか、これから少しずつわかってきますよ。(^ー^)


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