ワインを作りたくて世界を旅してみる話 第十二回
収穫体験
ブドウの収穫は朝が早い。朝7時にワイナリーに到着。もう既に仕事は始まっていた。
私たちは4人で参加。2人ずつに分かれて畑に行く人とワインセラーの中で働く人を交代で。
K夫妻で一組。Nさんと私で一組。
Nさんと私はブドウ畑に向かった。
収穫されたブドウを載せるための500キロの大きなビンを2つ繋いだトラクターでゆっくりと山頂へ向かう。
勾配の或る斜面が、角度や場所により日射量に違いをもたらし、味にも違いが出てくる。
オーナーの説明を聞きながら山頂へ到着。既に3人の男達がブドウを摘んでいた。
「やってみるか?でも、俺たちは出来高で仕事をしているから、後ろの方からやってくれ。」
と、ハサミを渡されピッキングスタート。
男達はどんどん先に進んでいき、私たちの歩く速度とさほど変わらぬスピードでブドウを摘んで行く。熟練の成せる技だ。私たちとはどんどん距離が出来て行く。私たちが邪魔をしてはいけない。数メートルやったところで諦めてハサミを置いた。というか、生活のかかっている彼らの邪魔をするわけにはいかないと、Nさんと話して決めた。
30分程でビンの半分は埋まってしまった。1トン摘むのに1時間かからないそうだ。そして、ビンが埋まるとトラクターに繋いで持って行き、山の中腹にあるワイナリーまで運ぶ。
そして、空のビンが届くとまた摘み始めるのだ。
一日でこのサイクルを4〜5トンするそうだ。
満杯になったビンをワイナリーに持って行く際に、私たちもワイナリーへ戻り、今度はブドウの仕分けである。
収穫されたブドウの房から、葉っぱや痛んでいる粒、虫などを出来るだけ取り除き、破砕機に入れる。
そして、ブドウの実だけがホースを通ってタンクの中に入れられる。ここから数週間、ワインの仕込みが行われるそうだ。
文字で説明するとわけが分からないのがセラーでの仕事。説明してくれたのはそこで働くアシスタントワインメーカーEさん。彼は日本のパスポートこそ持っているものの、殆ど日本で暮らした経験はなく、日本語、英語、スペイン語の3カ国を操るマルチリンガル。その彼がワイン作りの過程をわかりやすく教えてくれた。
今までどれだけ文字で写真で勉強しても想像がつかずに流していた部分が実際に目の前で行われている。
この日の私の感動は今でも手に取るように思い出す。
ボランティアという体では来ていたが、殆ど何もしなかったけれども、やっと進んだ気がした。お昼間近になり、Eさんに連絡先を受け取り帰宅したが、私の興奮は冷めなかった。
ここで働きたい。
著者のYoshinaga Kaoriさんに人生相談を申込む
著者のYoshinaga Kaoriさんにメッセージを送る
著者の方だけが読めます