シンデレラ症候群

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私は某出版社の写真部に入社した。

基本的な仕事はカメラマンのアシスタント業務だったが、簡単な物撮りや、著者近影などの人物撮影などは任せてもらえた。

もちろん 本当に自分が撮りたいものは、そこには無かったけれど スタッフみんなで何かを創り上げるという楽しさはそこで知ったと思う。


現に、どんな被写体であろうと やっぱりそれが書籍化したり、誌面に載ったら嬉しかった。

もちろん 出版社だから、芸能人にも普通に会える。

撮影に立ち会える事もあった。

煌びやかな衣装に、完成されたメイク、華やかなストロボの光を浴びて 彼女達は益々輝いた。


だけど、今や人気モデルや売れっ子女優だって、何も生まれついてそこに至ったわけでは無い。

普通の女の子がある日 突然 スターへの階段を上る事もある。

それは、まるで魔法のように。

だったら、それをやってみたらいいんじゃないか?


魔法をかけてみよう!私が‼︎


完全に思いつきと好奇心で高校時代の友人達に話を持ちかけた。

「私達の写真集を作ろう」と。

メンバーは高校の時の部活の友人13名。

もちろん みんなそれぞれ社会人になっていたから、撮影のスケジュールを組むのは めちゃめちゃ大変だった。


看護師、介護士、保育士、教師、事務員、美容師、専業主婦…


それぞれのライフスタイルもあるから、それらを柔軟に合わせて撮影を進めた。

ヘアメイクは、その当時 東京で美容師として働いていたMに頼んだ。

この写真集の中でも登場している。

スタイリストをつけるお金も無いし、もちろんスケジュールがうまく組める保証もないので、衣装はそれぞれ持ち寄りで みんなに協力してもらった。

結局 なんだかんだデザイン・製本まで合わせたら丸々1年はかかったと思う。

でも、その苦労も出来上がってきた写真集が吹き飛ばしてくれた。


今回の写真集のタイトルは、

《PANDORA COLORS BOXXX》

かの有名なパンドラの箱にかけて名付けた。

絶対に開けてはいけない禁断の箱。

だけど、人はそこをどうしても避けては通れない…と、暗に女性なら誰でも心に秘めたシンデレラ症候群を示している。


色をテーマに持ち込んだのは、私達13人のそれぞれの個性を表現するには面白いと思ったから。

あとは、視覚的に違いを捉えやすいようにしたかったのもある。

結果は、もう見てもらえればわかると思うが 女ってすごい。

真夏の溶けそうな日もあった、

真冬にノースリーブ、ショーパンを着させた事もあった。

怒られそうだけど、ロケ地もお金をかけられないから全てゲリラ。








「このタイヤ工場たまらない!」

「この家の門構えすごいよ!」

「よし!線路で撮ろう」

「とりあえず、ド派手な服で田んぼってのも面白いよ!」












よし!やってみよう‼︎
もしも怒られたら頭下げればいいし‼︎(笑)


若さゆえの行動力が、頭の中にあった画を現実のものにした。

もうワクワクが止まらなかった。










そして、無事に写真集が出来上がって 友人達にお披露目した時のみんなの笑顔は忘れられない。

撮影の技術や、その他 かなり荒削りな作品ではあるけれど 彼女達の表情を見ていたら そんな事よりも大切なものがあると思いしらされた。

キャーキャー言いながら、嬉しそうにページをめくる瞬間。

そして、極め付けはこの言葉。


『こんな経験 もう2度と出来ない』


素直に嬉しかった。

そして、嬉しかったと同時に疑問も残った。

こんな風に自分を表現しないで、人生を終えて行く人はどれくらいいるんだろう?と。

悲しいかな 女性が自分が主人公になれると信じているのは「結婚式」くらい。

良くて「七五三」「成人式」かな?

でも、どれも なんだか『自分を表現する』『シンデレラみたいに魔法をかける』ってニュアンスとはちょっと違う気がする。

少なくとも、私は。


人生は有限で、そのうち 自分のために使える時間もまた限られている。

誰に見せるわけでもないけれど、(もちろん 見せまくってもらえたら嬉しいけど・笑)自分の確固たる自信になる写真があるって心持ちが違う。


何度も言うけれど、

《女性は誰だってシンデレラになれる》

絶対に。






そして、覚悟を決めたら
不可能なんて無い。




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