小学生は寝かさない! 最高の桜も紅葉も仕事で堪能 〜青春の京都学生ガイドクラブ〜
バス教習を乗り越えて、暑い夏休みが終わって、秋が来ると、いよいよ観光シーズンです。
9月の半ばから徐々に仕事が入ってきますが、ピークは10月から11月の2ヶ月間です。授業がない日(または、…まあ休んでも支障がない日。笑)を選んでシフト表に「◯」をつけて、配車(=仕事をもらうこと)を待ちます。
秋のシーズンは、小学校の修学旅行が主なお客さまです。ちなみに、わたしたち「京都学生ガイドクラブ」に仕事を依頼してくださる旅行会社及び学校には地域性がありました。秋シーズンは、東は岐阜県や愛知県、西は岡山県や広島県の学校が多かったような気がします。
小学校の修学旅行は、基本は1泊2日。初日:京都駅(または高速のインターチェンジや最初の下車地)で乗車〜京都市内をガイド〜京都または奈良の宿へ送り 2日目:宿へ迎え〜奈良市内をガイド〜奈良駅(または京都駅、最終下車地)で下車、またはこの逆コースが定番でした。
わたしたちがバスに乗車する配車地(=お客さまの最初の下車地)の定番は、京都が清水寺、奈良は法隆寺でした。
特に清水寺は、ピーク時にはいくつものキャラバン(バスの1団体をこのように呼びます。)が集結することも多く、ガイドクラブメンバーが清水寺のバス駐車場で揃って待機する姿もよく見られたものです。
小学校の修学旅行での下車地は、小学生にもわかりやすい、定番中の定番がほとんどでしたので、新人でも比較的ガイドがしやすかったですね。
お客さまが子どもなので、反応がわかりやすく、ある意味「キャラクターで勝負」できるというのも、ネタのバリエーションが少ない新人としては、ありがたかったです。
とは言え、小学生は何に興味を示すかわからない!ガイドとしては、お寺や神社の案内、また車窓から見える風景をご案内しなければいけないのですが、案内そっちのけで小学生が騒ぎだすのは普通のことでしたので、いかに自分の方に向かせるか、コレは課題でした。
それでも騒いでくれる方がまだいいのです。2日目等は、宿で騒ぎまくった結果、疲れて寝てしまうこともよくあって、これは……。何とも空しかったです。(泣)
ガイドの仕事では、バス1台、1クラス40〜50人(当時)のお客さまを1人でコントロールしなければいけないので、本当に話術を研究する必要がありました。小学生のガイドでは、一番の役目は「旅行中、寝かさないこと」だったかもしれません。
この時の経験があるので、わたしは人数が多い分には、何十人いらっしゃっても、結構平気です。コチラを向いてもらえる話し方ができる自信があります。
仕事は修学旅行ばかりではありませんでした。
修学旅行以外の仕事を「一般さん」と呼んでいました。いわゆる一般団体のことですが、コレが実に千差万別。
社員旅行、旅行会社の募集旅行、互助会の旅行、変わり種としては、お寺の参拝ツアーもありました。
お寺の参拝ツアーは、そもそもが信仰心の厚い年配のお客さまが中心で、お寺や神社に関心が高い方が多く、学生のわたしたちは「孫」のように可愛がっていただけました。案内も喜んで聞いていただけるので、参拝ツアーの仕事はクラブ内人気が高かったですね。
一般さんともなると、観光コースのバリエーションが格段に増えて、時には教習で習わないコースまで行くこともありました。
珍しいコースの仕事が入ると、配車を受ける予定の人は先に車で路線確認をしに行きます。行ったことないコースがあると、配車を受けられる仕事の範囲が狭まるので、誰かが路線確認に行くと聞きつけたら、便乗させてもらって見に行ったり、自主的に行ってみたりしました。
一般さんの仕事でとても好きだったコースがあります。
それは、京都では「嵐山から高雄」、奈良では「室生寺〜長谷寺〜談山神社」、そして「比叡山から琵琶湖」を巡るコースです。
上記のコースは、「桜」や「紅葉」を楽しむ目的で来られる一般さんには外せないコースです。すべて、くねくねとした山道を巡る「山岳コース」で、桜や紅葉シーズンの美しさは格別でした。
小難しい歴史や美辞麗句は必要ありません。ただただ、移り変わる車窓風景を見て楽しむことができるコースです。いわゆる食レポではありませんが、自分の目に入った風景の美しさをそのまま言葉にして伝えるだけでいいのです。仕事を通して、わたし自身が、本当に贅沢な時間を過ごさせていただきました。
これらの場所は、標高が高いので、市内よりも長く桜や紅葉を楽しめるのもポイント高かったです。シーズン終わりかけの頃でも最高の景色を楽しめる、とっておきの秘策的な要素がありました。この頃、最高の桜や紅葉を数多く見る機会をいただいたおかげで、桜や紅葉に関しては、非常に目が肥えたと思います。
ちなみにわたしは非常に車酔いするタチなのですが、ガイドの仕事でどんな山に行っても一度も酔ったことはありません。「車酔い、直ったのかな?」と思って、普通に車に乗って山に行くと、すぐ酔いました。仕事は別なんですね。
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