完全徹夜明けの午前五時,たったひとりの職員室で心が晴れやかだった理由

晴れやかな 気持で迎えた 午前5時

 ある年の9月のこと。同僚が結婚したので,その“祝う会”のパンフレット作りを担当した時のことです。

 私はアルバムやDVD作品などを作るのが好きなので,同僚たちは制作担当者に,私を指名しました。私は嬉々として取組を始めました。


 自分から進んでお受けしたプロジェクトでしたが,想像以上に大変でした。結婚されるお二人の馴れ初めを始めとして,記事になりそうなネタを仕入れるために,お二人の新居に何度も足を運びました。写真も動画も,たくさん撮りためました。


 お二人が挙式を上げるハワイの式場と,なんどもeメールでやりとり(英語で!)もしましたし,お二人の幼なじみさんからたくさんお話を伺いました。


 そして極めつけは,職場の同僚からの〔お祝いの言葉〕でした。各々の文量が違うので,レイアウトが極めて難しかったです。そして,


「私もコメントを載せてほしい」


と,締切後一ヶ月以上が経過してから連絡してくる人もいました。


  さてさて,そんなこんなで,ようやくすべてのデータが揃いました。最後の難関はプリントアウトです。せっかくのパンフレット,印刷品質はもちろんグレード の高いものに設定しました。すると当然,一枚印刷するのにかかる時間が長大になります。具体的に言うと,一枚印刷に30分!


 さらに困ったことには,翌日の夕方までにすべての印刷を終えなければならないのに,職場のメインプリンターのインクが切れてしまったので,より遅い機種を使うことになったのです。どんなに楽観的に計算しても,午前5時30分までは印刷に必要。
  最初は私に遠慮して,職場にはたくさんの同僚が居ましたが,それにも限度というものがあります。皆,私におやすみの挨拶をして,職場を後にしていきました。私は一人で職員室に残り,延々と印刷です。

 とそこに,一人の女性が現れました。

同僚の一人ですが,服装や化粧の様子など,もう完全に寝る直前の風情です。時計を見れば,午後10時30分すぎ。その彼女,自分の席(私のちょうど向かいの席でした)に座ったと思うと,テストのマルつけを始めたのです。


 え,こんな夜中に? 私がいて学校が開いているのが分かっているから来たのかな?などと考えていると,彼女は私の顔を見てニコッと笑い,


「一緒に食べません?」


と,肉まんを差し出したのです。食後には,チョコレートもいただきました。


 彼女は私だけが残っていることに,不公平感を持ったのでしょう。まだお子さんは小さいのに…そこまで考えて気が付きました。そうか,彼女は学校に来るために,お子さんを寝かしつけてから来たのだ。だから,服装も化粧も,寝る直前のようになっているんだ。


 私の心には温かいものが流れ込みました。彼女は11時過ぎには帰宅しましたが,一人残った私の心は,いつまでも晴れやかでした。

著者の森内 剛さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。