大切な人を失って。
次話:
苦しみと葛藤からの脱出
初めて悲しみを知った。
というくらい、これまで味わった感情とは
かけ離れた感情を感じた。
今までいろんな事に挑戦したし、挫折も
諦めた事もたくさんあった。
諦めきれなくても、だけど手の届かない事も
たくさんあった。
転校もした、今まで親しんできた友達と
離れる事だって経験していた。
でも、その時とは比べものにならない
喪失感が残った。
実感はほとんどない。
「あいつが死ぬはずない」
「まだどこかにいるかも」
そんな感情が湧いてきて、止められずにいた。
彼がバイト先に訪ねてきて言った
T
また飲み会やらないの?
という言葉は皮肉にも
彼がこの世を去った事で再び実現した。
生前の彼を知るメンバーは大いにバカ騒ぎし
一緒に飲み、一緒に叫び、時には一緒に歌い
気の許せる仲間、、、だと思っていた。
これは故人を美化する発言ではなく
本当に気の良いヤツで僕の知る限り
彼を嫌う人間はいなかった。
誰より人想いで自分の事より他人の事、
周りを楽しませる事ができる男だった。
そんな彼がなぜ?
それぞれがそれぞれの疑問や思いを抱える中
僕たちは以前のように大いに騒いだ。
やりきれない気持ちをどうやったら
解消できるのか、わからず、ただただ
若さに任せて騒ぐしかできなかったんだ。
悲しんでも、死んだ人間は喜ばないかも
しれないと思ったけど、やっぱり泣いてしまった。
これが大学時代で一番のほろ苦い、というのか
一番痛みを伴った経験と思い出だった。
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