第14話 1本の木と奇妙な夜 【少し不思議な力を持った双子の姉妹が、600ドルとアメリカまでの片道切符だけを持って、"人生をかけた実験の旅"に出たおはなし】
1本の木と奇妙な夜
前回の記事はこちらへ⇒第13話ルカとの出会い
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マチュピチュ村へ。
旅人の中で言われてるんだよ。知ってる?
電車は渓谷の間をガタガタと揺れながら走る。
マチュピチュへ行く専用の電車だった。
急に言われたルカの言葉がよく聞き取れなかった。
そう言って、ルカは窓の方に向き直す。
乗り物が好きなルカは、ずっと窓の外ばかり見ていた。
山と山の間を走るその車窓は
切りっぱなしの岩肌や緑の木々など壮大な景色を写している。
ーマチュピチュのあと不思議なことが起こる…?
それはなっちゃんのことばとも重なる気がした。
そう言えばマチュピチュが転機になるって言っていたな…。
ルカとの出会いからすっかり忘れていた。
すぐ乗り物酔いをする私は、少し気分が悪い。
電車の揺れと眠気に任せて、椅子にもたれて半分眠っていた。
:
:
どれくらいたっただろう。
トントンと肩を叩かれ目が覚める。
ルカはもう横にいなかった。
立ち上がって自分の荷物を取る後ろ姿が見えた。
外の景色はすっかり静止している。
山間の緑の多い景色から、駅に変わっていた。
マチュピチュ村に着いたようだった。
それだけ言って、彼はもう電車から降りるところだった。
私も荷物を拾い上げ、慌てて彼の後ろ姿を追いかける。
そして急いで電車の扉を降りた。
マチュピチュ村
電車を降りると、そこはいかにも観光地という風景が待っていた。
豪華なホテル、賑やかなおみやげ屋さん。
そしてマチュピチュ目当ての、様々な国籍の観光客の姿。
雨季だというのに、なかなかの人だ。
しかしよく見ると、村の周りにはゴーゴーと川が流れていた。
ゴツゴツした岩肌の巨大な山もすぐ目の前だ。
自然と観光地のコントラストが面白い村だった。
目的のマチュピチュまでは、この村からまたバスに乗って山の上まで登るのだ。
私たちは、朝一番のバスで行くことにしていた。
朝は比較的観光客も少ない。
今日はこの村に一泊して、朝早くバスに乗る。
ルカはそう言うと坂を歩き出した。
私たちのホテル探しは、現地で歩いて探すスタイルだ。
傾斜が急な坂道を、バックパックを背負ったままよたよたと登っていく。
道の両側には、派手なレストランが並んでいた。
マチュピチュ村は値段も急に高めだ。客引きも観光客慣れしている。
観光地になると急に村全体がカラフルになるのだ。
人の勢いのあるエネルギーが村を彩っていた。
まだまだ坂を登っていくと、ホテルに入る人も落ち着いてくる。
みんな坂がキツくて、下の方のホテルに入っていくようだった。
私はなんとなくピンときた場所で止まった。
ホテル選びの勘は私のほうが得意だ。
まぁ、ルカは寝れさえずればどこでもいいのだろうけど。
その宿は、坂の上のレストランの奥に隠れるようにあった。
外装と違って、中は小綺麗な可愛い作りだ。
「アデランテー!アデランテー!(入って入って!)」
気さくなペルー人のスタッフに案内されるまま中に入っていく。
ホテルは一応見せてもらってから決めるのだ。
階段の途中のおどりばには、ソファーと机が用意されていてかわいい布がかかっていた。
ここでゆっくりできそうだ。
そしてその奥にあるのが私たちの部屋だった。
黄緑色のベッドカバーがかかった2つのベットが置いてある。
トイレやシャワーもついていた。
なかなか立派な宿だ。
宿にあまり期待してなかった私は嬉しくなった。
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