職人パパが、娘と難関私立小受験に挑戦した話

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その子、ライオンパンです、食べると勇気が出ます!って、答えたんだよ。

すごいよね~、いいよね~!」と興奮気味。

「・・・だから、あ~ちゃんは、何を作ったの?」

「あ、粘土が茶色だったから、バイオリン。」


「え? バイオリン??」


「あ。ちがった、バイオリンハンバーグ」

「あああああ。よかった・・・・。けど、ハンバーグって、先生にわかったかな~?」 

「うん。先生に聞かれたから、バイオリンハンバーグです。

これを食べると、バイオリンのようなきれいな声で歌えて、

みんなに聞いてもらえますって、言ったよ」

・・・まあ、まあ、いいかな。という返答に、初めて息を吐き出した。


と、最終的な試験日には、こんな風になるのだが、

1年前には、粘土での造型では、おだんごすら、きれいな丸にならないし、

そんな、とんちのきいた受け答えなんて、考えられないし、

大人に話しかけられると、かたまってしまうような子だった。


幼稚園児というのは、月齢によって、その成長に大きな開きがある。

4月生まれと、3月生まれでは、

発育著しいこの時期だと、身長体重ばかりではなく、知能も、からだの器用さも

まったくレベルが違う。


そのため、「お受験」は、たいてい、月齢を考慮する形で、生まれ順に

試験内容も難易度を変えて行われる学校もある。

また、総じて男女も、女子のほうが発達が早いので、男女も分けて行う。


なので、この「絵画、工作」のお題は、

同じ学校の試験科目でも、

男女、生年月日によって、

「食べ物」「ぼうし」「プレゼント」「のりもの」「どうぶつ」「昆虫」など、

異なるお題が、出された。



受験準備する側は、そのどれが出題されるかわからない以上、

それらすべてを、1回は作っておく必要がある。

・・・ってことで、紙粘土の造型が、本棚に大量に並んだ1年だった。


場合によっては、

「海にすむ生き物」

「たまごで生まれるもの。たまごで生まれないもの」

「八百屋さんに売っているもの」

「4本足の動物」

「はたらく車」

など、そこに知識を問うものと組み合わされる場合もある。


なので、

電車に乗っている時間に、なぞなぞごっこで、復習のようなことをした。

「鳥は、たまごから生まれるか? 赤ちゃんで生まれるか?」

「ひよこ!」

「・・・えっと、じゃあ、ひよこは、どこから出てくるのかな?」「わかんない?」

「たまご、なんだよ」

「え? うちの冷蔵庫のたまごからひよこ、出てきたことないよ!!」

・・・と、ややこしいことになってしまったりすることもある。


つまり、この「絵画、工作」の1科目とっても、

準備する側にとっては、とても膨大なことが控えていることに、

わずか4~5歳の無邪気なわが子を見つめながら、呆然とする。

受験準備を始めるのは、遅くとも、受験の1年前の年中さんの11月。

そもそも、クレヨンで、思うように絵は描けないし、塗れないような状態なのだから。 


でも、職人パパは言い放った。

「やれる子が、いるんだろ。なら、やれるよ」

・・・親馬鹿炸裂。思い込み上等。


今だから、冷静に考えて言えることだけど、

「絵画、工作」は、中高受験の「作文」大学受験の「小論文」だと思う。

だから、字が下手でも読めて、内容があればいい。


ただし、作文のマスは、守らないといけないし、

句読点やら、送り仮名は間違えちゃいけない、

という感じだろうか。


机の上を、ある程度、整理しながら、

描いたり、作ったりできる、というのも、採点対象らしい。

(時には、ひとつの道具(はさみ、やらテープカッター)を、

知らないおともだちと、シェアできるか、とか)


作品の内容、発想力も採点されるが、

創作中の態度、意欲も、大事なのだ。


つまり、「いっしょうけんめい」、「自分の想像力を広げて」、

「作りやすい環境も考えつつ」、そんな総合力が見られている。


おそらく、5歳の「幼児」と「少年少女」のはざまの受験生たちは、

ただただ、おかあさん、おとうさんの喜ぶ顔を胸に

懸命に手を動かすんだと思う。


それまでに、一緒に作った、いっぱいの経験や、

「こうやって、ここに置くと、机から落ちないよ」と注意されて身につけたことが

自然に、できるようになっていて。


・・・本番試験からの帰り道、

あ~ちゃん、粘土へらを落としちゃって、先生が拾ってくれたんだぁ~。

ちゃんとお礼言ったよ!(自信満々)」

と聞いたときには、グーで、なぐりたくなったが。



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