「おはなしの記憶」のお話 ~職人パパが、娘と難関私立小受験に挑戦した話 第2話~
15歳で中学を卒業。
20歳で独立。九州から、東京へ。自分の腕一本で生きてきた、職人。
そんな職人がパパになった。
娘に「よい環境、よいお友達との時間」を与えたいために、
考えぬいて、行き着いたのは、「お受験」への挑戦だった。
パパは、「お受験」のトビラを開けた。
【お子さん、お話、ちゃんと聞いていますか?】
小学校受験の科目に、「おはなしの記憶」というジャンルがある。
読み書きができない前提の幼稚園児なので、
いわゆる国語のテストを、
すべて、ヒアリングで行うといえば、わかってもらえるだろうか。
「くまさんが、森に行きました。
森で、はじめにりすさんに会って、どんぐりを3個もらいました。
次に、きつねさんに会って、クリを5個もらいました。
最後に、おおかみさんに会って、りんごを8個もらいました。」
「くまさんは、どこに行きましたか?」
おはなしと合っている絵に、丸をつけましょう。
山、海、森、花畑の絵の中から、森のところに、丸をつけると正解。
きつねさんから、もらったものは? で、クリが3個、5個、8個の中から・・・。
と、まあ、こんなのが、初歩の初歩。
まずは、このあたりから、練習するのだが、
もちろん、「真剣に」聞いていれば、できない問題ではないけれど、
そこは、5歳さん。
幼稚園から帰ったあとは、お昼寝モードだったり、
夕食あとは、満腹で、ぼんやり。
それじゃ、朝の登園前はといえば、元気すぎておちつきがない。
問題の難易度以前に、やる気にさせるのが、ひと苦労だ。
とくに、この、「おはなしの記憶」というのは、
読んできかせたり、CDでお話を流すのだが、
そのしばらくの間、お話に集中することが、むずかしい。
お話を聞いている最中に、窓の外にすずめが・・・とか、
お話を聞いている最中に、トイレに行きたくなる・・・とか。
もう、親の焦る気持ちなんて、お構いなし。
まあ、この年齢で、受験生の自覚があるわけもないわけで。
そこで、パパは言った。
「オレもいっしょにやる! 競争だ!!」
・・・負けず嫌いDNA(パパ)が、負けず嫌いDNA(あ~ちゃん)に、着火。
もちろん、パパの圧勝。
ただ、あ~ちゃんは、幼児教室で、
スムーズに、楽しく「おはなしの記憶」を身につけるためのレッスンを連続受講。
お話を聞きながら、それを絵に描いていったり、
お話を聞いた後で、それを絵に描いてみたり。
(この、聞きながら描くと、聞いた後で描く、を繰り返すことで、
かなり、イメージの絵画化が、5歳児の頭の中で、スムーズになるらしい)
そうすると、
「かおりさんは、家族でドライブに行きました。
お父さんが運転してくれました。
お父さんの後ろに、お兄さんがすわり、その隣に、妹が座りました。
助手席にかおりさんが乗りました。
公園に到着すると、お父さんとお姉さんはバドミントンを
おにいさんとかおりさんは、キャッチボールを
妹とおかあさんは、縄跳びをしました。
お昼になったので、おべんとうを、池の近くの大きな木の下で食べました。
おとうさんとおかあさんは、おにぎりを、
おにいさんは、ホットドッグ、
お姉さんとわたしは、サンドウィッチ、妹は、ドーナツを食べました・・・・」
「車の中のすわる位置で、おはなしと合っているものに、緑の△しるしをつけましょう」
となる頃には、パパは、「もう、オレ、無理!」と、脱走。
あ~ちゃんは、そんなパパを横目に、「これだ!」と、
きらきらした目で、自信をもって、△をつけた。
・・・しかし、緑のクレヨンではなく、
よく出題に出る赤のクレヨンで書いた△だったりして、
詰めの甘さに、が~っくり。
著者のイサカ アツコさんに人生相談を申込む
著者のイサカ アツコさんにメッセージを送る
著者の方だけが読めます