【第六話】『旅支度』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
それから僕は、旅に必要なものを揃えた。
まずはシューズ。
「歩くなら、絶対にニューバランス!」
そうネットに書いてあった。
アウトレットモールに行き、靴を探した。
僕はカタチから入るタイプだ。
カッコいい靴を見付けた。
「軽いし、歩きやすそうだし、そんなに高くないし、これで良いじゃん!」
と思った。
しかし、靴は歩く上で最も重要なアイテムだ。
陸上をやっていた僕は、靴の大切さをよく知っている。
知らないことは、知っている人に聞くのが一番早い。
「日本海まで歩くんですけど、どんな靴がいいですか?」
ここの店員さんは、親切に教えてくれた。
「長い距離を歩くなら、絶対に靴底が平らで繋がっているものがいいです!」
「ソールも柔らか過ぎちゃダメ。適度に硬いくらいが一番いいです。」
「日本海まで歩くなら、この靴ですね!」
一足の靴を勧められた。
「ダ、ダサい…。」
口には出さなかったが、
100%僕の好みではなかった…。
カタチから入る僕にとって、機能も大切だが、やっぱりカッコいい方がいい。
しかも、高い!
ダサいものに、お金を払うのは、物凄い抵抗がある。
ハッキリ言って、嫌だ!
「ちなみにこの靴じゃダメですか?」
気に入った、さっきのカッコいい靴を指差す。
「絶対にダメです!絶対に!」
「この靴は長く歩くようなものではありません。」
「言ってしまえば、お遊び用です。」
「歩けて10㎞くらいですよ。」
「それでもこっちが良いと思うなら、やってみたら良いと思いますが。」
「絶対に後悔しますよ。」
100%、いや、300%くらい否定された…。
「ま、まじか…。」
僕は迷った。
デザインを取るか…
機能を取るか…
安いのを選ぶか…
高いのを選ぶか…
カッコいいのを選ぶか…
ダサいのを選ぶか…
その場では決められなかったため、店員さんにお礼を言い、店を後にした。
僕は結局、ダサいのにした。
カッコを気にせず、万全の体制で、全力で挑みたかった。
ネットで、一番安いお店を探した。
ダサいのを買うからには、せめて少しでも安いのを…
そこだけは譲れなかった。
こうして、僕は歩き旅で一番大切な相棒を手に入れた。
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