一次試験の発表があり、
3日後に親子面接本番。
泣いても、笑っても、これが最後。
前日の、幼児教室の面接模擬特訓では、
パパは、「まだまだのデキ」だけど、良いところもあると、
自信をもたせていただき、
娘は、「ほぼ完璧な仕上がり」と太鼓判をいただき、
わたしは、「早口すぎる、しゃべり過ぎるのは、よくない」と注意を受けて帰宅。
親たちが足をひっぱらないように、
まさに、そんな状況。
面接で大事なのは、
学校の考え、校長の方針を理解できているか?ということだろう。
たとえば、学校の準備、復習などを親が、どう考えているか?
自主性を重んじる学校だからといって、
「子ども自主性に任せて見守ります」だけで、オッケーなのか?
それとも、
「低学年のうちは、学校にご迷惑をおかけしないよう、
自主的にできるように指導はするが、親が管理する」と答えるのがよいのか?
ニュアンスや、その子どもの持ち味にもよるが、
親の姿勢、子どもの資質、ともに、評価の材料となっていることは確かだ。
学校に早めに到着。待つこと30分。
幼児教室でごいっしょだったファミリーが、
何組が同じ部屋で待っている。
お互いに、会釈をするものの、静かな時間が流れる。
いざ、先生に、うながされて、面接室へ。
緊張は、ピーク。
3回ノックの後、
父親を先頭に、子ども、母親と続いて中へ。
戸を閉めたところで、
三人が並んで、お辞儀(練習通り、息もぴったり)。
着席。
面接をしてくださる先生は、4人。
子どもの席は両親の真ん中にあるが、1メートルほど、前にある。
両親の顔が見えない状態だ。
子どもは、どんな質問にも、前を見て、
後ろを振り返らずに、自分の力で答えることが大事だそうた。
まずは、娘が名前を聞かれる。
大きな声で、はっきりと答えた。
次は、すぐに、一家の長へ、質問が移る。
「お父様にうかがいます。」
その内容は、
志望理由、学校までの通学経路、
在校生の印象など。
昨日までの模擬練習同様、
訥々と、考えながら、マイペースで、パパは、話した。
むずかしい言葉を使う余裕もなく、
思っていることを、丁寧に話した。
それは、営業トークも、プレゼンもしたことがない、
そういう訓練もしてこなかった話し方。
職人らしい、自分の手を使って仕事をしてきた人の言葉。
校長先生は、にこやかに、
「大変よくわかりました。
それでは、今度は、君にお話をきかせてもらうからね。
元気に答えるんだよ。」と子どもの方を向いた。
「好き嫌いはありますか?」(第3話参照)と、
直球で、弱みを質問された。
続いて「好きな食べものは、何ですか?」
「お母さんの切り昆布の煮ものと、ぶりの照り焼きです。
お父さんの作ってくれる、カリカリの餃子も大好きです。」
(4人の先生、それは、おいしいそうだねと笑顔)
「幼稚園では、どんな遊びは好きですか?」
「忍者ごっこと、ドッヂボールです。」
「忍者ごっこって、面白そうだなぁ」。
「どんなことをするのかな?」
「みんなで、忍者になって修行をします。」
「得意な忍術は、何ですか?」
「グルグルの術です。速くまわって、相手をびっくりさせます。(先生たち、大笑い。)」
と、和やかに進んだ。
母親のわたしには、
万が一の場合の、家族での約束、ふだんの生活のなかで感じる成長について。
最後は、また、父親への質問だった。
「娘さんの、長所、ここは、えらいなぁと思うところは、どんなところですか?」
パパは、また、訥々と、話した。
努力をして、がんばれば、達成できるとわかっているところ。
鉄棒にしろ、自転車にしろ、ヴァイオリンにしろ、
自分自身で、努力する喜びをすでに知っているのが、いいと思っているということを話した。
逆上がりの練習で、手にマメを作って、つぶれて血が出ても、
できるまで、鉄棒にしがみついていたこと、
補助輪をはずした自転車で、何度も転んで、あちこち擦りむいたのに、
泣かずに、乗れるようになるまで諦めなかったこと。
思い出したパパは、涙声になった。
「えっ?」泣いてる??
面接の場で、自分の娘の話に、自分で感動して泣くって、あり??
と、冷や汗をかきつつ、でも、もう、誰にも止められない。
幼児教室で、「面接会場では、とにかく前を向いて、家族で顔を見合わせるのは、ダメです」と
言われていたので、顔を見ることもできない。
校長先生を見ると、うっすら涙を浮かべているではないか!?
「ありなの?!」
校長先生は、
「ご両親様のお考え、お子様への教育方針など、大変よく、わかりました。
本日はありがとうございました」と締めくくった。
3人で、立ち上がってお辞儀をし、
戸のところで、再度お辞儀をして、廊下へ。
「パパ、泣いてた~?!」と娘。
「やるだけのことは、やった!」とパパ。
泣き笑いで、くしゃくしゃの顔になっていた。
合格発表、運命の10:00。
20分も早く、到着。
門は、閉められたまま。
すでに5,6人が、待っている。
幼児教室で、いっしょだったママがやってきて、合流。
この頃になるとすでに発表後の、
ほかの学校の合格、不合格を
お互いになんとなく知っていたりする。
ライバルっていうより、
戦友のような感覚。
いよいよ、開門。
張り出された番号の前に、人が群がる。
「あった!」
「あった!」
お互い、思わずハグ。
涙と笑いと、いろんな感情がわきあがってきて、
頭が真っ白になった。
パパに電話。
「よぉ~~~~し!」と叫んだ。
最後のほうは、涙声になっていた。
15歳で中学を卒業。
自分で見つけた、その道の師匠のもとに住み込みで弟子入り。
自分の腕一本で生きてきた職人が、初めて経験した受験での合格発表。

コネがないと、合格はない、とか、
親が出身でないと、きびしい、とか、
いろんな噂を聞いたけれど、
結果は、
何ひとつ持ってない、我が家に、合格をいただいた、ということだ。
お受験は、大博打。
お金も時間もかかるけれど、
勝てるかどうか、試験問題の傾向や、その時のいっしょに受験するチームのメンバーなど、
運も左右する。
できるだけの準備をしたら、あとは、天に任せようと思っていた。
たかが、6歳の子どもの結果、
人生は、始まったばかりだ。
ただ、この受験の準備のなかで、
我が家の場合は、夫婦で悩んだり、時間のやりくりすることで、
たぶん、受験をしないで過ごすよりも、ずっと濃い時間を過ごせたと思う。
一見、無謀、無理に思えるようなことも、
やりようによっては、結果を出せるのかも、と思えた。
それは、きっと、これからの家族にとって、喜ばしいことに違いない。
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以前に比べれば、ずいぶんと、ポピュラーになった、
小学校受験。
それでも、経験をした方を探すのは、むずかしく、
どんな風なの? どんな準備をすればいいの?を
娘の入学後に聞かれる機会が多かったので、書いてみました。
それぞれのご家庭と、志望校によって、
正解は、無数にあると思います。
お役に立つか?!では、ありますが、
お読みいただき、ありがとうございました。

