小学校受験の科目には、
「行動観察」というものがある。
受験会場で、初めて会う子ども同士で、
グループとなり、自由遊びを行うというもの。
大人でも、初めて会ったばかりでは、
お互いに出かたがわからず、
マゴマゴしてしまうもの。
生まれて5年足らず、
ことばを発し始めて3年余りという幼児に、
そんなことが、できるのか?!と、
この試験があると知った時には、思ったものだ。
娘の受験予定の学校の傾向としては、
たいていは、5人ぐらいのグループで、
あからじめ用意された、道具(新聞や、ボール、ロープなど)を使って、
遊びを考えて、みんなで、遊んでください、というものが多いとのこと。
その対策として、幼児教室でも、
その練習をする。
こちらは、やや知っているお友達とのやりとりだから、
本番よりは、ハードルが低い。
それでも、
なかなか遊びは、始まらず、もじもじする時間が流れることが、しばしばだ。
幼児教室の先生のお話によれば、
用意されている道具を使った鬼ごっこやリレーのような競争が、
子どもらしく、動きもあって、好印象なので、
「これを使って、こんな風に競争しない?」というような提案を最初にできると、
リーダーシップがあるということで、よい、とのこと。
レッスンでは、先生のアイディアを聞きながら、
子どもたちは、「そういう風にするんだなぁ」と理解して、
毎回、違ったメンバーで集められても、
遊べるようになっていく。
とはいえ、
みんなが、最初に「これで、○○しよう!」と言う、言いだしっぺになれるようになれる訳はなく。
我が家も娘も、楽しく遊びに参加することは、できても、
全体をひっぱっていくようなタイプではない。
そんな受験科目が存在する学校を受験すること自体が、
まちがいなのか?と悩む日々。
「協調性があるのは、いいことですが、
発言をしたほうが、積極的に見えますからね」と、先生も苦笑い。
5歳の娘に、リーダーシップを説明しても、理解不能。
どうしたら、わかってもらえるだろうか・・・。
できるように、なるのだろうか・・・。
娘が寝てから、パパに相談。
パパ「でもさ、そういうタイプじゃないんだから、しょうがないよ」と、あっさり。
「それじゃ、その科目で、点が取れないよ・・・」と、ぐずぐず言ってみる。
「じゃあ、なんか、言えそうことを、シンプルにひと言だけ、言わせるのは?」
「ひと言?」
「そう。いろんな状況だろうけど。ひと言だけなら、アイツも憶えるだろうし、言えるだろ!」と。
それから、ずーーっと考えた。
リーダーシップっぽい、ひと言。
どんな状況でも、使えるような、汎用性のある・・・。
そんな、ひと言、あるのか?!
「行動観察」のレッスンを見学し続けてわかったのは、
この科目で行われる遊びは、
ほとんどが、鬼ごっこか、リレーの集約されるということ。
言いだしっぺが「○○をつかって、こういう鬼ごっこしない~?」と、言い出すと、
残り4人は、たいてい口をそろえて、「いいよぉ」と答える。
そこで、娘の出番。
「それを、ケンケンで、やるのは、どう?」
というのだ。
(これがリレーのような競争のゲームでも、以下同文)
受験本番の1ヶ月前、悩んだあげく、思いついたのは、
そう、片足で進む、「ケンケン」。
鬼ごっこや、リレーを
バージョンアップさせる、ひと言を言う作戦。
どんな遊びでも、使えそうだ。
ためしに、幼児教室の「行動観察」の時間に、
「ケンケン」を提案してみると、
みんな楽しそうだし、先生も「いいアイディアですね!」と、笑顔。

受験本番。
例年通り、「行動観察」が行われた。
もどってきた娘に様子を聞くと・・・。
「すご~く楽しかった!
おたまに、ボールをのせて運ぶ競争をしたんだよ。」
「え? ケンケンできないよね、それ・・・」
「うん。だから、言わなかったよ」
「・・・・・(ガーーーーン)」
娘は、わたしのショックの顔を見上げて、
「あ!」と思い出したように、続けた。
「わたし、1回目の競争で勝ったから、
勝った人が審判やることにしよう!って言って、
次の競争で、審判やったんだよ。
みんな順番にどんどん競争して、楽しかったんだぁ」
どうやら、子どもなりに、自分の意見を言って、
チームに貢献する楽しみを感じたようだ。
リーダーシップなんて、そう簡単に見につくものではない。
けれど、「ケンケン」で伝えたかった中身は、伝わっていたようだ。
1次試験の結果は、合格。
あとで聞いたところによれば、
娘のチームは、5人全員合格だった。
倍率が高い学校なので、
これまで、1度もなかった結果だとか。
「これまで見たなかで、もっとも、楽しそうに活発に遊べたチーム」だそう。
受験だからと、周りを蹴落として、
わが子を合格させたい、という気持ちで臨むのは、おかしい、
と思ってやってきたが、
この結果を見たときに、その考えでよかった~と、肩の力が抜けた。
パパの「ひと言だけ」作戦は、
つい、いろいろと多くを伝えようと、しゃべりすぎる母親には、
とても効果的だった。
そして、いよいよ、家族3人が試験を受ける、
親子面接へ、駒を進められることとなった。

