【第8話】変身願望とTRPG
はじめてのゲームマスター
なぜ、年越しセッションをやることになったのか?
まぁ、その場のノリというのが一番ではあるが、比較的そのサークルのメンバーは大晦日が暇しているメンツが多く、更には暇な人数が多いがセッションの数が少ないという需要と供給のバランスが崩れていたことが原因である。
シナリオとして、僕が選んだのは友人に連れられていったコミケの同人誌シナリオだった。
大晦日の前の冬コミでゲットしたてだったのは、トーキョーN◎VAにはまっていてシナリオ集を出しているサークルを見に行きたいという一念だった。
驚くべきことにTRPGにハマりだしてから、行動範囲が広がってきていたのである。
さて、そういうこともあって入手してきたばかりのシナリオならということで卓のメンバーを集めて初めてのRLをやることになったのだ。
シナリオの内容をキーボードで入力しながらという流れだったために、レスポンスが遅かった。
しかし、熟練者が多かったこともありフォローを入れてもらいながら自分がおもてなしをするように遊んでいく。
そのシナリオには普段自分が遊ばないようなヒロインキャラクター(語尾がやんすとか、アニキとかと呼ぶような子)がいたりして、そこはそれで面白かったが、問題も多かった。
なぜならば、TRPGの高い自由度により想定外の絡みをされることが頻繁におきたのである。
いうなれば、台本にないアドリブでの掛け合いの世界であり、シナリオに書いてない部分を自分なりに「こうだろうか?」「こうしたほうが面白いだろうな」という観点で話を作り上げていった。
大金持ちNPCにお金をたかって来たキャラクターに対して、大金をさっさと貸し付けたりなどやりたい放題に答えてもいたが、そういうところが参加者に受けて盛り上がったのを今でも覚えている。
除夜の鐘がなっても、シナリオが終わらずよく朝6時に一度区切って、1日の夕方に再開して終わらすことになったが、疲れながらも楽しい時間を過ごせた。
ゲームを遊んでいただけなのに、今まで遊んだどんなコンピューターゲームよりもそのTRPGを遊んでいた時間は濃厚で、貴重なひとときだった。
1つの話をみんなで作り上げて終わらせることができる。
それまでの僕はライトノベルもどきを書こうとしながらも終わらせることができずにいた。
けれども、TRPGのマスタリングで初めて終わらせることができたのである。
たとえ、借り物の話だったとしても遊んだメンバーと展開は唯一無二の出来事になると今では思う。
この経験から、僕は更にTRPGにのめり込む事になったのである。
……続く
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