【第三回】少年Aがいた街。

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前編: 【第二回】少年Aがいた街。




遅くなりましたが、完結編を書きました。

たくさんの「続きが読みたい」を、ありがとうございました!


***


犯人、つかまる


大学からの帰り、地元の駅の改札を抜けて自宅のほうへ向かう途中、街の雰囲気がいつもと違うことに気がついた。

事件発覚からすでに1ヶ月近くが経過しており、警察や報道陣の姿はもはや見慣れた光景になっていたのだが、明らかに数が違う。まるで群れのように多い。


それを見たわたしは直感的に

あ、犯人、やっとつかまったんだ。よかった・・・!

と思った。

報道陣の後方で近所のおばさん達が数人ずつ集まって、立ち話をしている脇をすり抜ける時に、会話の切れ端が耳に入った。

おばさんA
中学生だったなんて…ねぇ。
おばさんB
まさか、だったわよねぇ。誰も疑ってなかったから。
おばさんA
でも、そういえば…


そこまで聞いて、さっきまでの安堵の気持ちに、一気に暗雲が垂れこめた。


犯人、わたしの知ってる人じゃありませんように。

てか、中学生って!嘘でしょ・・・


祈るような気持ちで、家についた。

実家の玄関のドアを「ただいま」と開けると、奥から母親が出てきて開口一番、

犯人、つかまったって。T中の3年生の男の子。
わたし
えっ・・・T中?めっちゃ近所やん。犯人、知ってる子?
直接は知らんけど、あのへん知り合いばっかりよ。その子の家の前、えらいことになってるって。報道陣と野次馬で。
わたし
ああ・・・
Rちゃんは、大丈夫かな。


わたしは、少年A宅から徒歩数秒の距離に住む、かつての教え子・Rちゃんのことを思い出していた。

「見て、先生!中学生になったら、これ着るねん!」と、嬉しそうにピカピカの制服を見せてくれたRちゃん。

「中学校ってどんなんかな?勉強、むずかしくなるのはイヤやけど、部活は楽しみ♡」

と、頬を紅潮させて新生活に胸を弾ませていたRちゃん。


まさか、入学したばかりの学校の門に子どもの首が置かれ、その凄惨な事件を起こしたのが同じ学校の先輩だなんて、誰が想像しただろう。

どれだけショックを受けているだろう、と想像すると、胸の中をかき乱されるような思いがこみ上げて、苦しくなった。


もちろん、被害者のご家族の苦しみとはまったく比べ物にならない。

ただ、メディアには事件のショッキングさ、異様さばかりが取り上げられて、ほとんどスポットの当たることがなかった「あの中学校に通っていた子たちの傷」がいかばかりだったのか、20年経った今も考えずにはいられない。


***

どこにでもあるような街の、片隅で。


その後のことや、事件の流れ、さまざまな考察については、いくつかの書籍が出版されて、多くの人々の知るところとなった。

みんなの読んで良かった!