俺が詐欺師に騙された話…しかも海外で(中編)
まずは台湾に着くと、その人の奥さん(実はこの人も被害者だった)という人を紹介された。
すごくきれいな感じのいい人だった。
奥さんとAさんと詐欺師と4人で、モスバーガーに行った。
「えっ?モスバーガー?」
と思ったが、詐欺師はこう話した。
「日本と違って、台湾のお金持ちってのは意外に飾らない。だから、こういう雰囲気の方が好まれたりするんだ。」
俺としては、重厚な扉があってその向こうで厳かに密談するのかと思ってたから、びっくりだった。
そして、その実力者が到着する。
全員が緊張する。
俺なんか、粗相(そそう)したらどうしよう?とドキドキだった。
とりあえずは普通のおじさんだった(60歳代前半?)。
客家(はっか)の人で、割と日本語が上手なのでほぼ日本語で話された。
台湾と日本はもっと仲良くした方がいい。
とか、その人がどれだけ偉いのかという話を聞いた。
俺はもう緊張しっ放しで、聞くことがすべて新鮮でその空気に完全に洗脳されていた。
しかもその話が長過ぎだったので、かなり苦痛のミーティングだった。
今になって考えると、その人が偉い人だったのは間違いないのだが、一体どれくらい偉い人だったのか本当のところはわからない。
俺の予想では…日本で言うと副知事とか大会社の専務とか、そのくらいだったのではないかと思う。
だが、裏口入学させる力を持っていたり、知り合いに要人も多いみたいで、ある程度の力を有していることは確かだった。
そんな人にあったことなかったので、知らない世界を垣間みるようなドキドキ感があった。
しかも、こんな場に連れて来てくれた詐欺師に感謝していた。
詐欺師が「よし、君の印象は合格だから、夜は一緒に飯を食えることが確定した。」
というようなことを言われ、とりあえず胸をなでおろした。
夜までの間、本当に詐欺師と奥さんとAさんがよくしてくれた。
タクシーに乗ってる最中に、詐欺師が「今見えた?あの交差点。あそこが一番台湾で値段が高いところで、俺の両替商はあの裏にあるんだけど看板の端っこしか見えなかったなあ。」
「えっ、台湾にも両替商があるんですか?」
聞く話のスケールが大き過ぎたので、もう全部信じていた。
・チベットに行ったときに超偉い高僧からもらった数珠の話
・香港にはどれくらいの金持ちが住んでいるか?
・台湾のパスポートと中国のパスポートの違い
・本人の出身大学の国士舘で悪さをしてた頃の話
・ドバイにフェラーリを売りたいこと
・ロレックスのウンチク話
さらに会話だけでなく、
パスポートのスタンプが俺以上に多いこと。
明らかに俺より英語が出来ること。
両替商などの証明書(免許証)のようなものを持ち歩いていること。
とにかくいろいろなことに慣れていて、俺とは住む世界が違っている人だということを感じずにはいられなかった。
日本人が多く最も高級な場所の名前は天母(てんむ)というところらしい。
詐欺師たちはもちろん天母に住んでいた。
夜になって、その実力者と食事をするために、俺らは出発した。
俺の目的はもはや変わっていた。
その実力者に気に入ってもらって、台湾に出塾したときの力を貸してもらうことだ。
最初は会ってみたいと思っていただけだったのに、話しているうちに、俺もこの実力者の力を借りれるのではないだろうか?と邪(よこしま)な気持ちが芽生えていた。
せっかく今までフィリピンの英会話の準備をしていたのだが、台湾の方が圧倒的に進めやすいのであれば台湾でもいいかなと思うようになっていた。
そしてその夜、飲み会が開かれた。
食事ではさらなる登場人物がいた。
詐欺師の台湾の会社の副社長(実はこの人も被害者だった)だという人物だ。
慶應大学出身の温厚そうな人だった。
この人は中国語も駆使している。
ここで今までの登場人物を整理しよう。
Aさん…クローズが大好き→つまり義を重んじるすごくいい人
奥さん…美人で超社交的、非凡な感じ→さすがリッチな世界にはすごい人がいるもんだ
副社長…慶応大学卒、温厚な感じ、しかも中国語ペラペラ→詐欺師のグループのブレーンかな?
台湾人の大物…日本語もペラペラで大金持ち
この全員が詐欺師のことを「会長」と呼び、詐欺師がみんなに優しく接している。
俺のグループは相当いいメンバーに恵まれているのだが、詐欺師のグループもすごくいい仲間の人達に囲まれて、いい仕事しているんだな…ってそのときは思っていた。
そして、中華料理を食べに行った。
自分たちで、魚や貝などを選んで、それを料理してもらうタイプの店だった。
もちろん、そういう店には何度か行ったことあるのだが、いかにも初めて行ったような態度をとり、少しでも大物に気に入られたかった。
その店では、ほぼ全員で大物を盛り上げるという感じだった。
大物は話すのが好きな方で、たくさん話してご機嫌だったように思う。
この人と知り合うことで、俺も新しい世界が開けたかと思った。
次の日、俺は一人で帰国した。
台湾ではお金は1円も使っていなかった。
食事代は大物が全部払ってくれた。
移動費は詐欺師が出してくれた。
とにかく詐欺師が言った「あの人に気に入られたんだから、これで君の成功が相当見えて来た。」という言葉を俺は信じていた。
日本に帰国してから、詐欺師が俺にいろいろ言ってくる。
「君の本を台湾でも出版しよう。」
「早く君の塾を台湾に出そう。」
なんで詐欺師は俺にこんなによくしてくれるんだろう?
成功者ってのはやさしいから、きっとこの人は真の成功者なんだろう。
俺もこういう風に人のために生きれる人になりたいなあとか思ってた(…なったら大変だが。こいつの仕事が詐欺師なんで)。
1ヶ月もしないうちに、俺は台湾に戻った。
まあ、結論から言えば騙されるために…
とにかく世界に進出したい。
新しい挑戦をしてみたかった。
誰でもできることじゃなく、新しい挑戦をしたかったのだ。
2度目に、詐欺師夫婦が空港まで俺を迎えてくれた。
今度はタクシーじゃなく、なぜかバスだった。
2度目の台湾の目的は、俺の塾をどうするかを決めるためだ。
そのときは、もはや出塾しようと考えていた。
それがすっごくいい人達なわけ。
この詐欺師夫婦。
一緒に台湾の塾を調べてくれたり、塾に一緒に見に行ってくれたりするわけ。
挙げ句の果ては、日本人会のPTAにまで話をつないでくれて、お母さんたちを集めてくれたりしたからね。
俺一人じゃ絶対に出来ないよ。
そのときに、台湾に暮らす日本人のお母さんの何人かの話を教えてもらったんだけど、すごかったわー。
ドバイからヨルダンに家庭教師を呼んでる人の話とか、国際結婚の話とか…
とにかく世界の話ってすげえんだなって思ったよ。
詐欺師だけなら、もしかしたらここまで信用しなかったかもしれないけど、奥さんが素敵で、いつもニコニコしてて、俺より年下なんだけどやり手なんだよね。
そして、夜は大物と副社長が来られて、また飲み会。
俺の宿泊先は大物の別荘だった。
3億円するらしい。
台湾の家
マンションだったのだが、「そこは今使ってないから一人で使っていいよ。」だって。
3億円の家に一人だよ?
錯覚するよね。
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