【ファイナル】マグロ詐欺を繰り返していた詐欺師集団と戦った話

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前話: ④マグロ詐欺を繰り返していた詐欺師集団と戦った話



「裁判中にNBIの職員が船の中にあった新品の漁具を全部運び出しています」




「えっ?魚群探知機もGPSもですか?」




「当然です。会長はすべての漁具を自分で買い領収書や機械のナンバリングまですべて控えを持っています」




「ガマ社長が借金を払わないのですべて差し押さえです。裁判でお金を借りたって言ってたじゃないですか」




「しかも、あの船は指定した漁具が揃っていなければ出航できないように湾岸警察にも登録しておきました」




船は放棄したといっても、漁具は放棄したとは言っていません。100kMも引ける延縄の幹縄や最新式の魚群探知機はすでに買った時の値段と同額で中国のマグロ船が買いたいと申し出ていました。私がガマ社長のところへ行ったのは漁具の確認と海上警察への登録が主たる目的でした。



「しかも円安が進んでいますので漁具だけ売っぱらってもかなり回収できそうです」



会長から頂いた出張費用は半分がNBIの漁具の運び賃と保管料として、そして半分はこれからの裁判の手付金として弁護士へ渡されました。いくら高給取りだといわれている国際弁護士でもそれなりの金額を渡したのでそりゃ、彼らも気合いが入ります。




「ハハハ・・これは楽しい。完全に逆転勝利ですね」




「いえいえ、まだまだ始まったばかりです。彼らはこれから地獄を見ることになるでしょう」




商社マンはやられたら三倍にして返すと教わってきました!





腕利きの国際弁護士、NBIの署長、湾岸警察ともしかして怒らせてはいけない人たちを怒らせたのはガマ社長だったのかもしれません。




「成田空港には会長が迎えに来ています。帰りの車の中でゆっくりと作戦会議をしましょう。」




そして、ガマ社長と女形社長への取り立て作戦が始まりました。



しかし事を進めていくところで思わぬ大きな問題が発覚して、私は人生最大の経験をするところでした。


裁判所から直接船に向かったガマ社長、やはりガマ社長もあまりにも話がうまく行き過ぎたので少し心配になって船を見に来たのでしょう。漁具をすべて持って行かれ、ただの木造のおんぼろ船となった船を見て真っ赤な顔で怒りくるっていたそうです。


そして案の定マニラの空港に連絡をして私たちを出国させないように指示をしたそうです。



「あいつらを生かして帰すな!」

と、激昂していたようです。そのままマニラ空港から出国していたらパスポートにブラックリストの烙印を押されしばらく日本に帰れなかったかもしれません。



普段、人の目をキチンと見ない物静かな印象のガマ社長が怒り狂っているには訳がありました。


邪魔者の菊池さんの自由を阻害し会長から追加の金が届かない事を理由に船を売ってしまおうと考えていたそうです。


すでに売り先は見つけており、契約も交わしていたそうです。


ガマ社長のサインが入った「計算書」と書かれた7000万円の承諾書は公証書類として英訳分付で日本のフィリピン大使館に提出していました。


しかし、「計算書」だけではいくらフィリピンでも詐欺として立憲しにくく国際警察を動かすほどの効力としては弱いものでフィリピンの弁護士からも決定的な証拠が欲しいとくぎを刺されていました。




「証拠がないならガマ社長に証言させよう。きっと裁判で金の出所をつつけばきっと借りたと言ってくるでしょう。」




「その裁判記録が残り次第こちらが船を放棄しましょう。」



一か八かのかけでしたが、何もしないで船と引き換えで菊池さんを釈放しても何も残りません。


菊池さんには申し訳ありませんがひと芝居うたせていただきました。もし、ガマ社長が証言しなければ菊池さんの釈放も時間を要するところでした。



準備金をたんまりと弾んだためフィリピン人弁護士の動きは早かったです。あっという間にガマ社長の自宅、工場、奥さんが住んでいるマンションとすべて差し押さえにかかりました。



「いわれた通り、ガマ社長の奥さんが住んでいるマンションも分りました。そちらも差し押えました。フィリピンは借金を返さなければ金額により刑事告訴も出来ますがどうしましょうか?」



「今まで散々日本人を騙してこれだけの物を築き上げたんでしょう。彼らの分まで徹底的にやりましょう」



「分りました。地元の警察も協力してくれるでしょう。」



フィリピンの弁護士と電話で打ち合わせが終わり、事件の報告と共にNBIの署長に電話をしました。



「署長、以前、署長の弟さんがマニラ空港のそばに冷凍設備がある食品工場を探しているとおっしゃいましたよね。」



「ああ、今、世界的に日本食ブームなのでフィリピン産のアワビやらウニなどを冷凍にして販売したいと考えているんだがマニラも空港のそばだと土地の買収も高くてね。しかも冷凍設備やら真空パックやらで何かと設備投資が必要なので考え中だ」



「それならマニラに良い物件があります。日本人が経営している食品加工会社なんですが、そちらが資金ショートを起こしてこちらの借金が返済されずにいるんです。」



「弁護士がすべて書類を持っています。もし、良かったらこちらの持っているガマ社長の債権のすべてを弟さんに買ってもらえませんか?」



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