嫌いだった自分探しの旅 第3話 学生時代、日本を旅して
「日本を旅してみて」
旅をするまでは、「旅なんてしても、自分なんか見つからんだろう」そんな風に思っていました。
ただ、単純に旅をしてもたしかにそんなに自分に影響なんてないと思います。
ひとつ驚きだったのは、旅中に出会う人の多さでした。日本一周中であることを明示しながら旅をすると、いろんな人から話しかけられます。
旅人もいれば、その土地の人もいる。田舎の人もいれば、都会の人も。
盛岡では、75歳で自転車旅しているご老人にお会いしました。その方はどうも家の居心地が悪いようで、もう10年も旅を続けてるということでした。
正直10年も自転車で旅をされていると、旅の辞めどころがわからなさそうな印象を受けました。
青森では、自動車に「交通安全」を掲げて、ひたすらいろんな地域で交通安全を啓蒙している方と出会いました。お子様を交通事故で亡くしたらしく、「これは弔いなんだ」と語られていました。
福島では、地域をどうにかして活性化したいともがいているリーダーの方と知り合いました。地域が衰退するのを目の前に、怪我で元々の職だった漁に出ることができず、なんとかもがこうと必死にいろんなことを打ち出して実行されている、まさにリーダーでした。
旭川では、泊めてもらった家で宗教に勧誘されたりもしました。(笑)
信心深いことで、精神のバランスをとっている人もいるのだと実感しました。
東京では、愛すべき相棒となった自転車「グレートジャーニー」を置いて休んでいると、急におじさんから「良い自転車乗ってるじゃないか。この先に面白い自転車屋があるからおいでよ」と声をかけていただきました。
その自転車屋の店主に教えていただいたのですが、なんと僕に声をかけてくださったおじさんは自転車「グレートジャーニー」の初代設計者だったのです。
どんな想いで旅用の自転車を設計したのか、そんなことを旅中の僕に教えていただき、非常に心が熱くなったのを覚えています。
そんな感じで道中いろんな人と会ったのですが、決まってでてくる質問があります。
「君は、何してる人なの?」
もちろん、「今何をやっているのか」ではありません。
ニュアンス的には「君は何に対してその命を燃やそうとしているのか」という問いです。
当時僕はIT系の会社に内定をもらっていたのですが、「サラリーマンになるんです」という答えは何か違うような気がしてきました。
「あれ、俺は何に命を燃やしていくのだろうか?」
至極当たり前のことなのですが、いろんな人に問われ続けて初めて真剣に考えました。
そして、旅の中でいろんな人の生き方を目の当たりにする上で、そうしたいろんな人の生き様が、まさに自分の生き様をどうしていくのかに対してすごく影響を与えることを実感したのです。
「すげー!かっこいい!」という生き方もあれば「僕はこんな生き方は向いていないな」「こんな生き方はしたくない」といったものもひっくるめて、たくさんの見本と出会えるのです。
あ、これまさに自分探しの旅だ。やってよかった。
心の底からそう思いました。少なくとも、当時自分が
「俺は何に命を燃やしていくのだろうか?」
に関して真剣に向き合うという経験ができたのは、自分の人生の糧になっています。
「自分探しの旅」とは本質的に、「非日常を通じて、自分の生き方を振り返る」なんだと考えています。
日本のいろんなところを旅することで、真剣に自分の人生を向き合うきっかけになりました。
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