GPA2.3の地方出身大学生を、外資系投資銀行内定まで支えたメール

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次話: 人生のPlan Bから5年経ったU君は、どうなっているのでしょうか?



最初の面節を終えて、U君から連絡をもらいました。


「面接は、どうでしたか?」

「やっぱり、おれ以外は、帰国子女と留学経験者だけでした・・・」

「そうでしょ!だから、この9ヶ月が生きて来るんです。これだけやって落ちたとしたら、よほど、優秀な人たちが応募して来て、自分よりも結果がよかったと諦められます。そして、あなたは、この9ヶ月間、本当に良くやった。だから、堂々としていいんです。」

「でも、これから英語の面接があります。」

「それは、出たこと勝負です。慣れしかないから。」

「でも、落ちたらどうしよう・・・」

「一社だけ受かれば良いから。それに、英語力だけでは合格しません。総合力です。心配しないで。」


それから、4週間、U君に取っては、地獄の関ヶ原が待っていた。


攻めては討ち死にし、攻めては討ち死にして行った・・・


体重が、どんどん減って行った・・・


「U君、ひとつひとつの面接を大切な機会として考えて、なにが悪かったかを反省して下さい。そして、それを2度と繰り返さないことです。メモを取りなさい。その日のうちに、反省しなさい。」


U君は、面接を受けながら、あの5つの約束もずっと守って来ています。どれだけ厳しいかを想像出来ると思います。


それから、11月の末になりました。


外出先から帰宅途中で、U君から電話がありました。


「西條さん、おれ内定です!」


私の心が飛び上がる思いがしました。


「やったあ〜!!おめでとう!」


そう言うのが、精一杯でした。思わず、立ち止まりました。胸がつまりました。2人でやり切った感がありました。色々な感情が溢れ出て来ました。


「西條さん、おれ、本当にうれしいです。100%やり切ること、先始末すること、全ては準備に十分期間を長く持つこと。たくさん教わりました。」

「よかった、よかった・・・」


この時、メッセージボードには、U君とのメールの交換が、3200通を越えていました。U君とのコーナーは、パンパンにふくらんでいました。もう爆発寸前でした。


「人間ひとりの人生に関わる時、それだけのメールを交換しないと、相手を丸ごと理解出来ない。」


12月初めから、日本企業の就活が始まり、その時には、すでに就活を終えているU君がいます。たった一ヶ月で、勝負を決めたのです。


「おれ、なんだか、急にやることがなくなって来て・・・」

「U君、5つの約束は、卒業式前日まで続きます。それまでは、今までの生活をやって下さい。」

「ええ、そうします。卒業式までやり切ります。それから、元の彼女からメールがあって、寄りを戻したいって言うんです。」

「そんなオンナは、止めなさい。あなたの素晴らしさも見抜けない女性は、あなたの相手になれない。」

「おれもそう思います。」


それから、U君は、いままで通り5つの約束を守り続けました。


そして、卒業式前日に、最終の総合GPAが決まりました。


GPA3.2





「2年目の成績が、悪すぎましたね。一年生の時に、西條さんに出会っていたら、おれはハーバードの大学院に行けたかも知れない・・・」

「そうですね、でも十分アメリカの大学院へ行けるGPAですよ。3年目と4年目は、ともにGPAが3.8だから、専門分野での成績がいいことになりますね。これが大事なんです。よかったですね。」


それから、U君は、卒業式をご両親と一緒に迎えました。そして、私に連絡して来ました。


「おれは、学生時代に何も名残がありません。やり切りました。西條さんのおかげです。100%やり切ること、仕事は先始末、そして、一撃必殺!だらだら、試合をやらない。これですよね。」


私が、極真空手の師範から学んだことです。


「一撃必殺」


本番の試合で、なるべく時間をかけないで、相手を仕留める。そのためには、自分の技を徹底的に磨いて、破壊力を身につけて、試合に向かう。そして、数秒で相手を倒す。それから、体力を温存する。そうして、トーナメントを勝ち上がって行く・・・。


「西條さん、よかったら、この3200通のメール、PDFにして保存しておきたいんです。西條さんからもらった言葉、心にしみ込んで来ます。これ、おれの宝物にします。」

「いいですよ、どうぞ。」


そして、U君の体重は、出会った頃から10キロ減りました。今でも、変わっていません。どれだけの厳しい日々だったかを物語っています。


今のU君は、来年入社する内定者との懇親会で、名刺を渡したそうです。そして、憧れていた東大の卒業生と、同じ部署で勤務しています。


東大、京大、ブラウン大学、慶応大


「東大に入れなかったけれど、一緒に働くことになりました。」

「よかったですね。私だって、ハーバードやスタンフォードやイエール大学のMBAと一緒に働いて来ました。入学出来なくても、最後に職場が同じになればいいんです。それで、レベルは一緒と言うことですから。」





「ねえ、西條さん、職場から届いたファイナンスの通信教育テキストを図書館で開いていたら、中国人女性の大学院留学生が、声を掛けて来たんです。」

「ええ〜、すごいね。」

「彼女が、『ファイナンスを専攻しているんですか?』って、質問して来ました。その時に、『いいえ、投資銀行に内定したんです。』って答えたら、


『ええっ、学部で採用されたの?!すご〜い!!』って、言われました。」


「全ては、この2年半の努力の成果です。」


喜び一杯のU君の言葉です。


「私の言う通りにやれば良い。」


私との約束を守ったU君の、人生に違いを作った瞬間です。


就活で使うスーツを買えなくて、お兄さんのお下がりを着ていました。ぶかぶかの様子でした。また、カバンも、お兄さんのお下がりでした。


そんなU君が、いまではご両親に仕送りをするようになりました。


東京駅から雨にぬれないで通える職場です。そして、2020年に向かって、アメリカのロースクールに通うために、貯金しているそうです。





「人生のPlan B」


だれにでも、たくさんの選択肢があります。ただ、それが見えないんです。私は、その選択肢をU君に見せてあげただけなんです。


「人生のPlan B」


私が、U君に差し上げた人生の選択肢のひとつです。


人生は、何度でもやり直すことが出来る。


私の人生訓です。


ここまでお読み頂きまして、ありがとうございます。


感謝


PS:U君は、入社1年目に「新人らしからぬ働きぶり」と高く評価され、2年目に「英検1級」に合格し、「東京office」の中心人物として期待されています。そして、TOEFLで合格点を取り、3年目の5月から、Temple大学のロースクールに通います。目指すは、アメリカの弁護士資格。大学卒業と同時に、田舎のご両親に仕送りをする親孝行な青年です。

続きのストーリーはこちら!

人生のPlan Bから5年経ったU君は、どうなっているのでしょうか?

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