僕と家族とひきこもり。悲しみの底で見つけたカウンセラーという生き方を目指した2190日。

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そういって渡してくた本。


絶対読んでないでしょ?って思える本も中にはありました。

でも、毎月のように本をくれました。

「読んでみたら?」って。

時間だけは、沢山あったので、試しに読んでみたら面白くて、全部読んでしまいました。


母が最初にくれたその本は、佐藤富雄さんの「口癖の魔法」

という本だったと思います。(少し記憶が曖昧ではあります。)

その他にも、中谷さんの本とか、”でたらめ思考で幸せになる”とか、

明らかにお母さんは読んでないでしょ?という本が沢山あって

間違いなく僕の為だと、振り返って思いました。


その本を買っていた時、本屋に母がいて、どんな思いでそんな本を選んでいたのか、

どんな気持ちで、その一冊を手にとっていたのか、その時にどんな表情をしていたんだろうと、

(早く良くなったらいいな、少しでもひとしにプラスになるといいな・・・)

そんな気持ちだったんじゃないかと、そう思うと今でも涙が出てきます。


でも、毎月くれるその本が少しずつ、僕の気持ちを前に押してくれました。

口癖って、すごいんだな!

「いい言葉は良い人生を作るんだな!」

「言葉には気をつけないと、しかしなんでこの人は、年齢も結構いってるのに、こんなにエネルギーに満ちあふれているんだろう?」

と、つくづく思いました。

当時の僕には、いろんなそういった本の言葉が新鮮で、心に染み込んできて、

いつしか自分もこの本の人のように、魅力的になりたい。と、そう思うようになりました。


しかし、いつかこんな人に・・・とそう思うけど、現実は前に進まず、、、。

頭で考えるだけで、なかなか一歩が出ない。

足が、気持ちが、前に向かず、月日がたつほどに、

結局将来のこと、家族のこと、自分の苦しみや悩みから逃げるように

オンラインゲームにはまっていき、自分の気持ちから、人生からどんどん逃げていきました。

それでも、本を読んでこれじゃダメだと思うけど、でもどうにもできない。

そんな日々が長く続きました。


そこで、事件は起きました。


いつものようにゲームをしていて、姉と母は2Fに行き、父だけ残りました。

しかも、テレビもつけずに、父が座っていました。

(あ~、なんか嫌な感じがする・・・)そう思っていると、予感が的中しました。

いつものリビングの席に座る父は、おもむろに口をひらきました。


「ひとし、お前これからどうするんだ?」


その一言が始まりでした。

その言葉を聞いて、あ~ついにきたな・・・。ってそう思いました。

そりゃそうです。このまま息子をほっといて見ているだけなんでできないでしょう。

その言葉に対して、わかっているのに


どうするって何が?
何がってわかってんだろ?
どうするって言われても、どうもないしないよ・・・。
どうもしないよじゃないだろ、この先働かなくてどうするんだよ!
働く意味が分からない・・・。
意味とかいってる場合じゃないだろう、普通みんな働くだろ。自分で稼いでご飯食べていかないとしょうがないだろ・・・!
なんだよ普通って、、、。

そんなやり取りを繰り返し、お互いにヒートアップし、声を荒げて、もう大喧嘩です。

後半は泣きながら、僕は叫んでいました。

俺だって分かってるこのままじゃダメだって!そんなこと!だから転職サイトみたりしてんだよ!
分かってるならやれよ!見るだけじゃ何も変わらないだろ!
やってるじゃないかよ!でも、出来ないんだよ!働いて何が楽しいんだよ!この先、生きてどんな意味があんだよ!
お前は何もわかってない!働いてから言え!

生意気なことを繰り返す僕に、父は激怒し、

僕はどうして理解してくれないんだ!と泣き叫び、喧嘩は続きました。

そして、最後の方は僕はもうずっとだんまりでした・・・。

「お前の言っていることは、わかるけどな、でもな、働かないと、、、。」

そんな言葉も耳入らず、ただただ悔しくて悲しくて、ふがいなくて、だまって下を向いてうずくまって泣きました。

最後の方に、こんな一言を父から言われ、僕はもう何も言えなくなりました。


お前母さんが、毎晩泣いているの知ってんのか!? 自分の育て方が悪かったのかなって、泣いているの知ってんのか!?

そんなこと知りませんでした・・・。衝撃でした・・・。胸が詰まって何も言えなくなりました。

父がなんとも言えない表情で、だまってひたすら泣き続ける僕に近づいてきて、

一言・・・。

「頼むよ・・・」と言いながら、僕の左肩をぽんと叩いたその重さは今でも忘れません。

その時に初めて聞いて知ったのです。


母が夜、父の前で「自分の育て方が悪かったのかな・・・」って、

「何がいけなかったんだろう」って、自分を責めて泣いていることを。

父も、母も、辛かったんです。

そして、後日また大喧嘩をした姉もみんな辛かったんです。

それに気づいたのは、その父との大喧嘩のときでした。

それまで、自分だけが辛い、苦しいと考えていました。

敢えて触れないようにしてくれているなとは、感じていましたが、

ここまでずっと、ぐっと我慢してくれていたなんて、見守ろうとしてくれていたなんて、

そんなこと少しも知りませんでした・・・救いようがないですね・・・。

悩んでいる時もそうだと思いますけど、自分だけが苦しいってついつい考えちゃうんです。

家族がいるのに、自分は一人だって思っちゃうんです。

誰も理解してくれないってそう思っちゃうんです。

見守ってくれることが、どれだけ大変かなんてわからないんです。

もっと早く気づけばいいんですけど、その時はきづけないんですね・・・。

ただ、みんなが苦しいという事を知った僕は、家族にそんな思いをさせた自分を責めて、

責めて、責め続けました。

(何やってたんだろうか・・・、こんなに家族を泣かせても尚、一歩踏み出せない俺は何なんだろう・・・)

そんなことを思いながら、また何事もなかったかのように、

どうにもならない気持ちを抱えながらゲームをする日々が少し続きました。

そんな時です・・・。

・「ねぇ、働かないの・・・?」


当時、引きこもってはいたけど、彼女とだけはたまに会っていたんです。

そんな彼女と遊んで、夜に公園で話していた時に事件は起こりました。

ベンチに座っていると、何だかいつもと様子が違う彼女(以降A)。

すると重そうな口を開き、

彼女
ねぇ?働かないの!?

そう一言、言いづらそうに言いました。

その言葉を聞いた瞬間に、

喉が詰まり、胸がぎゅっと締め付けられて、すごく苦しくなった。

(お前もか、、、、お前までそんな事を言うのか、、、)


そんな思いが駆け巡り、母のこと父のこと、姉のこと、

全てがフラッシュバックのように、思い返され、

いろんな思いや、苦しみや、悲しみ、罪悪感が体を駆け巡りました。


もう、苦しくて、

(Aだけは味方だと思ってたのに。)

そんな思いとともに、大粒の涙が流れて止まりませんでした。

たかだか、「働かないの?」って言われただけなのに、、、。

その当時の僕にとってその言葉は一番聞きたくなくて、一番苦しい言葉でした。

そして、その言葉は家族のみんなが避けてきていた言葉で、喧嘩した時だけ言った言葉でした。


家族もそうだったし、今思えばAもそうだったんです。

Aも我慢していたんです。

そんな優しさに囲まれながら、そんな優しさが苦しくなり、

もっとも聞きたくなかったその言葉を

Aから聞いた瞬間に、その今まで溜まってた気持ちがぶわっと溢れてきてしまいました、、、。

それが涙として、大粒の涙として流れながら、気づけば二人とも号泣していました。

今までのこと、家族との大げんかのこと、

初めて話しました。

だから、だから、もう少し待って。

このままじゃダメだと分かってるからもう少しまって。ごめんね。

そうAに告げました。

するとAは

「ごめんね。そんなこと知らなかった。」

そういってくれました。

それから、ようやっと就職活動を始めて、

いろいろな人材紹介の会社に登録して、

働こう!そう思って、家を出ました。

そこで、不安を抱えたまま、

何を言おうと思って、一生懸命に考えながら

とある人材紹介の登録に行きました。

続きのストーリーはこちら!

僕と家族とひきこもり。悲しみの底で見つけたカウンセラーという生き方を目指した2190日。 その2

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