重度のうつ病からの生還、15年の記録
私の履歴書は、NYの投資銀行マン時代から、突然地獄の底へ突き落とされた記録になりました。
私は、ずっと「上昇志向」を続けて来ました。履歴書を見れば、本人の歴史がわかりますね。私も、採用面接に行くと、よく言われました。
「西條さんは、アメリカ留学して就職した頃までは、ずっと上昇志向だったけれど、そのあとが、下り坂ですね。」
正直言って、その通りです。
そんな経歴の中で、
この60歳までどうやって生きて来たか?
どうやって、回復したか?
そして、
どうやって、第二の人生を見つけたか?
その私の記録です。
私は、とても欲張りです。
ひとつのことが完成すると、次の課題を見つけます。見つけないと、「不安」なんです。いつも、何かに挑戦していないと、「こころが枯れる」感じがしていました。そんな性格の私に、ピッタリのものを見つけたのです。
それは、「サブリミナルテープ」です。
音楽テープなのですが、その曲の中に、音には直接出て来ない、あるメッセージを入れこんであって、その曲を聞き続けると、効果が出る仕組みです。
このテープは、アメリカで開発され、とてもいい評判でした。
たとえば、スーパーストアで流すと、『万引きがいなくなる』ことも結果として作ることが出来ます。
それは、「万引きしてはならない」というメッセージが、盛り込まれているからです。
このサブリミナルテープを購入して、学習意欲を高めたいと考えました。
日本に帰国してから、ゆっくりと勉強したと考えた私にとっては、いい相棒だと思いました。
私が選んだのは、「集中力をつける」というテーマのテープです。
そのテープには、聞く制限時間があって、毎日15分でした。
そのテープを聞いていると、本当に「やる気」が出て来ました。
そこで、「もっと聞けば、もっと効果がある」と感じて、
とうとう6時間も聞いていました。
毎日、毎日、6時間も・・・聞き続けたのです。
そして、ある日のことです。
頭の中で興奮した状態が、夜まで続きました。
そして、眠れなくなったのです。
脳の中が、いつも『目が覚めている状態』になってしまいました。
そんな日が、2日続いた翌朝、
私は、突然『ベッドから起き上がれない』状態になりました。
「起きたいと言う気」が起こらないのです。
目が覚めていて、体を起こそうと言う気がないのです。
ずっと、ベッドの中で、じっとしているしかありませんでした。
「どうしたんだろう?」
『気がないなんて、どういうことなんだろう?』
これが、これから始まる15年間のうつ病との闘いのきっかけでした。
その日は、そのままじっとして、ベッドの中にいました。
トイレに行きたいとも感じませんでした。
真っ暗な部屋の中で、夜を過ごしたのです。
翌朝になって、少し体が動くようになりました。そして、這いつくばって、電話機にしがみつき、友人に相談しました。
私は、友人から「気功の先生」を紹介されました。その先生から、遠隔操作で「気を入れて」頂きました。少しやる気が出て来ました。
それから、友人が言いました。
「虎ノ門病院に、心療内科という専門分野がありますので、そこへ行って下さい。」
虎ノ門病院という敷居の高い病院へ行くのには、それだけの重い病気なんじゃないかって、感じ始めました。
翌朝、元気を振り絞って、虎ノ門病院に行きました。
診断の結果は、
「西條さん、緊急入院です。すぐに、ベッドを用意しますから、準備して下さい。」
「そんなに、悪いんですか?」
「そうです、重病です。あなたをこのまま返したら、きっと自殺する恐れがあります。私の目の見える範囲におかないと、あなたの命を守れないのです。」
その言葉を聞いた瞬間、
「これから、どうなるんだろう?」
そう思いました。
急に、すべてが「全く違う方向」に走り始めた感じがしました。
「でも、入院だけはしたくないんです。」
「どうしてですか?」
「親には、内緒にしてもらいたいからです。」
「でも、私は医師として、あなたの命を守る責任があります。」
「先生のお気持ちは分かりますが、どうしても、通院でお願いします。」
そう言って、私は、通院をすることになりました。
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