いじめっ子への逆襲!5歳の私と「マンション☆SAKU」①
子どもの頃アパート暮らしをしていた時期がある。その名は『マンション☆SAKU』。
木造二階建ての不思議なアパートだった。
新築のピカピカの建物だったからマンションと言ってしまったのか、たんに家主の趣味だったのかは定かではないが、住人は皆『SAKUマンション』と呼んでいた。
『マンション☆SAKU』には、若い新婚夫婦、韓国人の大家族、トレーラーの運ちゃんファミリー、左官さんと料理好きな奥さん夫婦、公務員一家などかなり個性の強い顔ぶれの人々が住んでいた。
何故そんなアパートに住むことになったのか?
私が3歳の頃、我が家にもう1人赤ちゃんが産まれるということになり、両親が新婚生活をしていたマンションが手狭になるということで、もう少し広い部屋を探すことにしたらしい。
しかし今の時代と違い、昔の賃貸マンションのオーナーはペットや子ども連れには家を貸したがらないことが多かったと聞いた。ペットや子どもが住むと家が傷むからという理由で嫌がられていたそうだ。
貸主が強い時代だったのだ。
当時両親と私は都会の街に住んでいたが、なかなか思う物件がなく、仕方なく慣れ親しんだ街を離れ、田舎町に引っ越すことになったそうだ。私が4歳、妹が生後6ヶ月の頃である。
新築マンションで、2LDK、日当たり良好、お風呂あり、水洗トイレ、駐車場完備、駅から徒歩5分。お子様連れのご家族も入居可能。
これこそ求めていた物件‼︎
両親は小躍りして喜んだという。
しかし、いざ見学に来てみると『ピカピカだがマンションではないな。』と一目でわかる真っ白なアパートの前面の壁にデカデカと書かれた『マンション☆SAKU』の文字。
詐欺だと思ったが、まだ誰も入居したことがない新しい部屋を見て一目で気に入った両親は、即決で入居を決めたという。
しかし住み慣れた街とは違い、夜は真っ暗闇で、ゲコゲコ鳴く蛙の鳴き声しか聞こえない田舎町は、戸惑いの連続だったそうである。
それは私にしても同じで、神戸にいた頃と同じようにご近所の大人にむかって『おはようございます!』とご挨拶しても誰も返事を返してくれなかった。
綺麗なワンピースを着てエナメルの靴を履いた私を異人を見るような目で見る近所の子どもたちは、遊び仲間にはなかなか入れてくれなかったし、たまに入れてくれても泥水をワンピースにかけられたり、袋入りのスナック菓子を私にだけわけてくれなかったり。
泣いて家に帰る毎日だったことを覚えている。
毎日いじめられる娘を見て両親は心を痛め、「こんな町に引っ越してこなければよかった。」と後悔したそうであるが、幼いながらも負けず嫌いだった私は、母に皆が着ているようなゴムのウエストのスカートやキャンディキャンディの運動靴やサンダルを買ってくれとせがみ、お気に入りのワンピースやヒラヒラしたレースのブラウスに別れを告げた。
著者のIzumi Unimamさんに人生相談を申込む
著者のIzumi Unimamさんにメッセージを送る
著者の方だけが読めます