いじめっ子への逆襲!5歳の私と「マンション☆SAKU」②予習と対策編

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剛にいれば郷に従え、である。

汚れても平気なカジュアルな服や靴を身につけ、スナック菓子を袋から食べることも見よう見まねで実践し、汚くて触りたくなかった泥水にも手をつっこみ砂場で泥だんごを作るスキルも身につけた。

あれよあれよという間に野生児に変身していく私を見て両親はショックを受けたそうであるが、そんな大人の嘆きをよそに、子どもの私は非常に生きやすくなり、とりあえずは自分の居場所を確保することに成功したのだから結果オーライである。

そんなある日、私の誕生日会に参加したいといじめっ子だった近所の悪ガキどもが言い出した。


母は嫌そうにしていたが、私は自分のテリトリーに招き入れ、散々自分に恥をかかせた子たちに密かに復讐してやろうと思っていた。


正確に言えば、当時まだ5歳になるかならないかくらいだったから復讐などという言葉も知らなかっただろうに『いつか絶対仕返ししてやるからね‼︎』などと思っていたというわけである。


当時の母はまだ若くて美しく、部屋はいつも綺麗に片付けられていて、スピーカー付きのステレオなんかも置いてあり、アパート暮らしの中でもわりとおしゃれな部屋作りを目指していたのだと思う。


部屋には、黒と金の美しい額に額装された難しい墨字の言葉が書かれた書が飾られていて、意味は解らぬまま平仮名の部分だけをこっそり読み上げては、ちょっと大人の気分を味わっていたのだった。


『あの子たちが知らないことを私は知っている。聞いたことがない音楽も知っているんだからね‼︎』


誕生日会にご馳走とケーキ目当てにやってくるあのいじめっ子たちをギャフンと言わせてやるのだ。


そんなことを企んでいたのだから、相当ませた嫌な子どもだったのだと今ならわかる。



いじめっ子たちをギャフンと言わせるための予習開始。

誕生日会が近づいたある日、あの書の意味を母にしっかり教えてもらおうと額に飾られた言葉について読み方を訊ねてみた。


『これはね、武者小路実篤って人が作った言葉なんよ。』


母は言った。


『読み方がわからへんねん。教えて!』


『愛しあい、尊敬しあい、力をあわせる。それは実に美しい事だ。って書いているの。』


なんと!よく解らぬが、とんでもなくいいことが書かれているということだけは理解できた。


これを『あいしあい、しあい、かをあわせる、それはにしいだ。』などと、読めぬ漢字カタカナ変換したり、ぶっ飛ばして心の中で読んでいたことは黙っていることにしよう。


そしていつも母がかけていたレコードを指差して聞いた。


『これは誰のなんて曲なの?』


『これはね、古賀政男さんって作曲家が作った曲で、古賀メロディーって呼ばれているの。』


チャンチャンチャー♪と哀しげなメロディーがなんとも言えないムードを醸し出す大人の聞く曲の名は古賀メロディーというのか。





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