あの頃、ビアハウス:Bye Bye blackbird

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 pack up all my care and woe 苦労も哀しいことも みんな詰め込んで
here I go, singing low      低い声で歌いながら、さぁ行こう
bye bye blackbird         
where somebody waits for me どこか わたしを待っている人がいるとこへ
sugar´s sweet, so is she    あまく優しい人、母さんのとこへ
bye bye blackbird         
no one here can love or understand me
            ここじゃ誰もわたしを分かっちゃくれない
oh what hard luck sotries they all hand me  
            なんてひどい巡り合わせばかりなのよ
make my bed and light the light  
                  わたしのベッドを作っておいて 母さん 灯りもつけといて 
I´ll arrivebe late tonight    今夜遅く帰るわ
blackbid, bye bye
                         (訳:著者)                                                       
      

1926年に作られた古いジャズソングである。
「Sleepless in Seatle」(トム・ハンクス、メグ・ライアン共演)などの近年の映画でもよく使われているそうだが、Sleepless in Seattleを観たというのに、JoeCockerが歌っているのを全く覚えていないのは不思議だ。それは多分昔観た古い映画、「裸足のイサドラ」の船上のパーティー・シーンで使われていた印象があまりにも強烈だったからかも知れない。

「裸足のイサドラ」は、斬新的な踊りで当時の閉鎖的な社会に物議をかもし出し、後にモダンダンスの祖と言われた、イサドラ・ダンカンの生涯を映画にしたものだ。彼女の生きざまもさることながら、衝撃的な最後を遂げた人でもある。

恋多きイサドラはパーティーで出会った若い男に心惹かれ、彼とオープンカーに乗り込み、走行中に首に巻いていた長いスカーフが車輪にからみつき、最後を終えたのだ。

ビアソングが主流のアサヒで、わたしは時折「yesterday」やシャンソン、そしてこの「バイバイ ブラックバード」などをアコーディオンのヨシさんに頼んで入れてもらっていた。こういう歌を歌えるのは、毎晩、
人でごった返しの夏場ではなくて、客のほとんどが常連ばかりというビアハウスの落ち着いた冬場である。イントロもあるのだが、多くの著名歌手がスローテンポでイントロなしで歌い上げている。わたしは聞くのも歌うのもデキシーランドジャズ的に軽いノリの方が好きだ。

この歌もリクエストがよく入ったものだ。
   
ビアハウスでは「ゆうちゃん、ゆうちゃん」と可愛がられながらも、自分の居場所をこかあそこかと探し求めていた当時のわたしの気持ちが、この歌にはいささかある。ビアハウス歌姫時代は、人とのめり込んだ付き合いはしなかった。

ビアハウスが閉まる9時半以降に、店長の塩さんがよく声をかけてくれる、「おい、ゆうこ。今日は夕霧そば(ビアハウスの近くお初天神界隈にあるおいしい蕎麦屋さんの名物)食べに行こう!」の誘い以外は、たいがい独り住まいの枚方は宮之阪のアパートに直行である。翌日のオフィスの仕事もあったことも理由ではある。

夕霧そばを食べながら、店長の塩さんを前に熱く語るは、「日本脱出」の夢」、その資金作りの歌姫家業であった。

ほぼ目標金額達成を目前に舞い込んできた当時の話に、梅田の新開店の喫茶店(この店は横山ノックさんのお兄さんの店だと聞いた)で、アサヒが終わった後の2週間、アコーディオンのヨシさんと歌ったことがあったが、これはきつかった・・・

喫茶店はビアハウスのホールと違い、床に絨毯が敷き詰められており、太くて大きなはずのわたしの声がそこに吸い込まれてしまって、店内に響かないのだ。

歌い終えて終電車へと足早に急ぐわたしは、自分のアパートの駅にたどり着くころはヘトヘトになっていた。9時からオフィス、そして、アサヒ、喫茶店での歌と、一日にこんなに掛け持ちで働いたのは、後にも先にもこのしんどかった2週間だけである。
 
「お前、死ぬぞ」と友人に言われるほど、クタクタになるまで稼ぎに稼いだ2週間ではあった。

そして目標の留学、移住資金は達成された。

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