新卒で証券会社に入社して1年間で100件以上の新規開拓を達成し、3億円の資金を導入した話(14)
紹介営業の「重さ」
同行訪問が終わった明朝、僕は顧問先を紹介していただいたK先生に電話をかけた。
正直、かなり電話がかけづらくて、逃げ出したいくらいだったのだ。
けど、勇気を振り絞って電話を鳴らした。
この度はどうも。
実はちょうど電話しようと思ってたんだよね。
社長から電話が来てさ、お怒りだったよ。
今から社長のところに謝りにいくんだよね。
正直君にはがっかりだな。
だから証券会社の人間なんて紹介したくなかったんだよ。
僕は紹介営業を完全に舐めていた。
紹介の「重さ」を何もわかっていなかったのだ。
正直、昨日の出来事があっても、今日、K先生に電話さえすれば許してもらえると思っていた。
きちんと謝れば許してもらえるだろうと踏んでいたのだ。
けど、そんな簡単なものじゃなかった。
K先生はその社長と顧問契約を結ぶに至るのも簡単ではなかったはずで、信頼を築くためにかなりの努力や時間を要したに違いないのだ。
市内だけでも税理士の数はかなりの数がいて、大きな税理士事務所もたくさんある。
けど、そのたくさんある税理士の中で敢えて小さな個人税理士事務所であるK先生を選んだのは、K先生の顧問先に対する信頼関係の高さによるものだろう。
K先生は僕みたいなサラリーマンじゃない。
K先生は生活のために本気で顧問先や顧客と向き合って信頼を築いている。
顧問先との信頼を失う=収入が減る なのだ。
給料が毎月どこかから勝手に振り込まれるわけではない。
K先生は自分で稼いで、直接、顧問先からお金を振り込んでもらっているのだ。
そのお金で奥様や家族も養っている。
仕事への本気度が全く違う。
そして、K先生が本気で向き合っているその顧問先を僕は紹介していただいたのだ。
完全にその「重さ」を軽く見ていた。
課長が同行するとき、もっと真剣に、「営業はしないでくれ」と伝えればよかった。
「自分だけにいかせてくれ」といえばよかった。
けど、言わなかったのは、本気でK先生のことも、顧問先の社長のことを考えていなかったのだ。
正直、心の片隅で、課長が投資信託を販売してくれれば自分の成績になってラッキーとも思っていた。
遂に大口で投信販売できちゃうかも?と心の中で期待してたのだ。
本当に馬鹿だ。
軽すぎる。
これでK先生と顧問先の社長の信頼関係が壊れたりしたら、僕はどんな顔をしてこれから仕事をすればいいんだ。
気づいた時には、僕は会社の朝会をすっぽかし、昨日会いに行った社長の工場へ電車で向かっていた。
続く
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