ESL(Enlgishas a 2nd Language)のクラスも決まりコースの初日最初のクラスは緊張の「Audio-Lingual」、ヒアリングです。しかし、教室に入るなり驚いた。一人ひとりの生徒用の机が黒板向きにズラリと並んでいた。
正面にある講師の机を除いて、ひとりひとりの生徒用の机には目隠し用に前左右と仕切りがあり、ヘッドフォン、マイクが取り付けられていた。今ではどうということのない光景ではありますが、これ、今から36年も前のことである。
使用するテキストは、一冊の本になっており、その中に取り上げられる、ひとつの架空の国を通して、その国の政治、経済、地理、文化等を学ぶようになっていた。
しかし、このクラスでなんと言っても面白かったのは、生徒の緊張感をほぐそうとしてか、授業のしょっぱなに、毎回必ず講師がPop musicを流してくれることである。これはかなり嬉しかった。
様々な国から語学研修に留学してきている生徒たちにとって、Pop musicは共通の言語とも言えよう。
わたしのみならず、他の生徒たちもこれである程度気分的にリラックスできたのは間違いないと思っている。
Mr.Jensen。 30代前半と思われ、アメリカ人にしては小柄であったが、なかなか男前の講師ではあった。
一度わたしは、授業も終わって彼が後片付けしているところへ行き、
「朝の音楽、リクエスト可能ですか?」
「Yes, youmay」
翌日ヘッドを通して流れて来た音楽は、わたしがリクエストしたもの!
「クラスのyukoのリクエストです」と前置きして、わたしがAudioクラスにいる間、この曲を何度も流してくれたのだった
何の曲かというと、
キャッツ・スティーブンスの「Morning hasbroken」である。
渡米前、自分が持っていた、たくさんのLPの中から選んで持っていったのは、ジョルジュ・ムスタキだが、これも、あの頃とても好きな歌だった。
おお!それは母が好きな歌であるぞ、とはしゃいだわけである。
「キャッツ・スティーブンスの歌を教えるなど、学校もなかなか進んでるではないの。」
と思っていたら、この歌はイギリスの古いフォークソングで、賛美歌444番にあたるのだそうだ。
世のはじめさながらに 朝日照り 鳥歌う
讃えよ 新しき歌を 讃えよ 新しき朝を
とでも訳せるのだろうか。
人間家業を少し長くしていると思う。
歌ひとつとの出会いをとってしても、世の中のことはこうして連鎖しているのだなぁ、と。


