アラフィフからのリターンマッチ

次話: アラフィフからのリターンマッチ 第二回


全ては自己責任。

きっかけは、23年前に遡る。

当時勤めていた銀行の同僚に結婚を迫られ、勢いで承諾したが、相手が私の家に挨拶に来た途端に「さめた」との一言。

彼が好きだったわけでもなく、ただ女のプライドを傷つけられたとの恥から、職場にも行きたくなくなり、転職した。

念願の音楽業界での仕事は楽しかった。同僚も皆お気楽、自由人で、結婚なんて運が向いたときにすればいいさ、という雰囲気。

しかし、一旦家に帰れば、地方出身の父親が、一つ上の姉と私に早く嫁に行け、みっともないと殴る蹴るの暴力を振るう。二人で家を出ることも話し合ったが、システムエンジニアで激務の姉には引っ越しを考える体力も気力もなく、ただ暴力に耐えるしかなかった。


「一人でも結婚して家を出れば、暴力もおさまるよね?」

そう思った私は、大学のOB会で出会った2つ上の前夫から好かれ、「好きになってもらえば女は幸せな結婚ができる。」と年配者から言われ、自分でもその言葉を信じ込み、交際九ヶ月で、26歳で結婚した。


両親は大喜びだった。招待客80人のうち、教員をしていた前夫は見せびらかしたかったためか、削りに削って50人強を呼ぶことにしたが、私の両親は気前よく費用を折半にした。

ウェディングドレスを選ぶことなど、私にとってはどうでもいいことで、母の好きなデザインにしてもらった。お色直しの色ドレスも、できるだけ安いものでいい、どうせこんな男の横に立つのだから。

結婚式の最中、皆、特に夫の同僚や先輩はとても嬉しそうにしている。

「どうせすぐ離婚するのに…。」宴席をひな壇から見下ろし、私はそうつぶやいていた。

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アラフィフからのリターンマッチ 第二回

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