ただのバイトリーダー、色々あってバイリンガルになる。
もちろんコーヒー屋さんで働くには当時の英語力では絶対に不十分なのは重々承知だったが、トライするのはタダだなと思って、思いっきり笑顔で面接をした。
そしたら、なぜか合格。なぜかは、その時はわからない。
ここからまた辛い日々が始まるぞーなんて考えていたら、その想像を優に超えてきた。
みんながなんて言っているのかまったく理解できなくて、お客さんにすら嫌な顔をされて、もう辛すぎ。
2日間働いたのち、スーパーバイザーに言われた。
「お前の英語力ではここで働けないと思う。違う仕事探したら?」事実上のクビ宣言。
カナダは使えない奴だったらどんどんクビにされるよ、って聞いていたけど、日本の居酒屋でバイトリーダーをやっていた自分がまさかな、なんて思っていた。
即座に、「もう一日ください」とお願いした。
そこなら確実に英語が伸びるって確信していたから。
「2日間の連休後、もう1日だけシフトあげるけど、それでダメだったらクビ。」と単刀直入に言われ、その2日でできることを考えた。
そこで、連休中は店に行って、給料いらないから練習がてら働かせてくれと同僚にお願いした。
「お前なに言ってんの?」といった目で見られたのは今でも覚えている。コーヒーに関しては無知で、さらに英語もできない。取柄はゼロに近かったのでできることはやってやろうという開き直りの気持ちと共に、俺を解雇したら後悔すんぞ、くらいの生意気な気持ちだった。まだ覚えなくていいよと言われていたメニューやらなんやらも全部覚えてやろうと思い、ネットで調べながら、「モカってなによ。」とか、「ラテって聞いたことあるぞ」とかそのレベルからのスタートだった。
2日連続、朝から晩まで働いた。
3日後、スーパーバイザーに、これでもだめだと判断するなら潔く辞めます、って言ったら、思わぬ反応。その人は韓国人なのだが、
「私もカナダに来た頃、やる気はあるのになにやってもクビにされてお前とまったく同じ状況だった。」
それが俺を雇ってくれた理由だったらしい。「英語力だけで評価したくなかった」って。
そのあとに言われた「Good job」がたまらなく嬉しかった。
そこではカナダ生活が終わる最後まで働いて、たくさんのことを経験させてもらった。
楽しいことよりしんどいことの方が多かったような気もするけど、
赤ちゃんみたいに「これ英語でなんていうの?」「この言い方合ってる?」ってしつこく聞いてはメモを取る俺に嫌な顔せずに、全員が、毎回丁寧に教えてくれた。
仕事を始めた当初、英語に関してはまったく自信がなく、正直たったの2日でできるようになるわけねえだろとか思いもしたが、それはただできない自分を正当化しようとしているだけ。
「できる・できない、を考える暇があるなら、まず黙ってやれ。
へぼい馬鹿な俺が求められてるのはやろうとするかしないか。」なんだなと学んだ。
みんなが最後に開いてくれたお別れパーティー。
周りの人には本当に助けてもらった。かなり感謝しています、ありがとうございます。
TOEIC初受験の結果。。。
カナダ生活も残り少々。この流れからすると「TOEIC高得点取るんだろうな。」甘い。
そう思ったなら俺の脳みそを買いかぶりすぎです。
カナダ留学の当初の目的はTOEICであったが、カナダで暮らしているうちに現地の人とコミュニケーションを取るにはスピーキングとリスニングが必要不可欠だと思い、TOEICで試されるリーディングはまったく勉強しなかった。今考えればただの甘えだった。忙しいからって理由を作って、やろうとしなかったっていうのが正しいかも。
カナダに住んでいればTOEICの点数は必然的に上がるだろう、そう楽観的に捉えていた。
2016年2月の終わりに帰国することに決まったので、いよいよ2015年12月12日、カナダ生活の総括として、人生初のTOEICを受けることにした。TOEIC860点を持っている友達が、
「カナダに住んでるし、800は楽勝で超えるべ。」
せめて800は取らないと日本には恥ずかしくて帰れないなと思っていたので、その言葉を信じて、試験が終わった後はただ結果を待っていた。2週間後の12月26日、結果を見て現実を突き付けられた。
「635点」
「は?」ってなった。
その時初めて気づいた、海外に住んでいるからって自主的に本を読まなければリーディングは上がるはずもないし、
リスニングに関しては、コーヒー屋さんで働いていて、ネイティブの人とよく話すから満点近いだろうって思っていたが、ジェスチャーとかに助けられて理解できていたんだろうな、って。
ダサすぎて、自分にドン引きした。
点数そのものがダサいとかではなくて、この俺がただ生活してるだけで800取れると思ってたその思考がダサいってこと。
自分を客観的に見れていなかった。その時、初めて自分の甘さに気付いた。
一年間近くカナダにいて635、、??
「俺今までなにしてたんだ??????」
なんなら、850くらい取れるんじゃないかとか思ってたから、635の数字を見たときは愕然とした。予想点数とのギャップが約200点。「このままではまずい。」
自分の中での想像していた点数を大きく下回っていたので、悔しさ、というか90%くらいの焦りから、一気に火が付いた。
次の1月30日のTOEICが日本に帰る前のラストチャンス。残りたったの約1か月。
ネットでTOEICについて調べまくった、どう勉強するのが効率がいいのか、だいたい1か月で平均どのくらい伸ばすことができるのか。
どこをどう探しても、「毎日8時間やって100点伸びました」とか、「毎日10時間で120点伸びました」とかしかなかった。頑張っても平均で100点しか伸びないらしい。しかも100点伸びるだけですごいとのこと。
ただ、100点伸びたところで735点。納得いかない。
そこで、海外に住んでいてこの選択をするのは本当に気が引けたが、プライドを捨て、TOEICの学校に行くことにした。ただ、そこでも平均100点~150点の伸びらしい。自力でやるよりはちょっと平均点が上がったからそこに賭けるしかなかった。
俺「900点取ります」
先生「え、ほんとに?かなり厳しいと思うなあ、目指してもいいと思うけど」
本気でイラッとした。心の底から「マジで黙れ、勝手に人の限界決めんなや。」と思った。
その言葉をエールだと受け取り、脳みそに焼き付けた。他の人は厳しいのかもしんないけど、
「俺は普通じゃない、俺なら絶対取れる。俺は無敵」
ナルシスト+バカ丸出しだけど、テストまでの1か月間、自分を1ミリも疑わずに信じ続けた。目標点まで265点。1か月で100点伸ばしてすごいと言われる人の二倍以上。。
1月3日から学校がスタートして、土日はコーヒー屋でバイトだったが、その他の6時間の睡眠時間以外は本当に英語漬けにした。登校時間はリスニング、ご飯食べながら単語帳、削れる時間はとことん削った。10時間で120点の伸びなら、それ以上やればもうちょっと伸びるだろう、と単純に考えたから。
ところが、学校で毎週金曜日に行われる模試で、みんなが毎週着々と点数を伸ばしていくのに対し、俺の点数は平行線だった。というか、上がるどころか2週目の模試に関しては下がりやがった。
テストまで残り2週間。諦めて、約170点アップの800点でいいかもな、結構な伸びじゃんそれ、ってか平行線の俺からしたらそれですら厳しいぞって感じ。
やる気では勉強はどうにもならないんだな、何回かそう思った。
ただ、そこでふと思ったのが、今までマジでテスト勉強したことないから、どうなるかわかんないな、って。
「できるかできないか考える暇あんなら黙ってやれや」って自分を鼓舞した。
そして、テスト本番前日の1月29日、最後の模試をやった。
それも点数が平行線だった。
本当にダメ男だな、って思いつつも、もう開きなおった。
こんだけやったから後悔はない、って言ったら大嘘だし、結果が付いてこないなら正直言って後悔だらけ。でも今更考えても無駄だし、考えるのやめよう。
結果
1月30日テスト本番。全て終えてなんかすっきり。手ごたえがあったかどうかは知らん、考えても点数変わんないしって、相変わらずの開き直り。
結果。。。
上が12月に受けた時のやつ、下が今回のやつ。
1か月で255点アップの「890点」。
目標の900は超えなかったけど、途中で800点に目標点を下げてたら間違いなく800もいってなかった。
890点に関しては、すごい・ダサい、色々な意見があると思う。
ただ、先生にすら軽く小ばかにされてた状況の中、諦めないで自分の目標を貫き通したことで、点数以上の何か大切なものを掴んだような気がする。
最後に
こんなに長い私なんかの文章にお付き合い頂きありがとうございました。
家族や周りの人に支えられ、決して誰もができるわけでもない海外留学を経験させてもらいました。
最後に私が一番伝えたかったこと、それは、
「明日、明日、と先延ばしにしないこと。明日が来ないことはマジで起こりうる」ということ。はいはい、と受け流すかもしれないが、それはまさに過去の俺。
その世の中に溢れかえっているありきたりの言葉を、真摯に受け止めることは当たり前の言葉なだけにものすごく難しく、脳みそのどっかにしまいこんで自分は関係ないと思い込んでしまう。
まだ親孝行をしていないと少しでも思う人は、後でじゃなくて今、感謝の気持ちをどんな形でもいいので伝えることを本当に強くおすすめします。そしてこれを読んで少しでもそういう人が増えたならば、それが今自分にできる、亡くなった母親へのせめてものの親孝行なのかなと思います。
今の私は、大袈裟でもなんでもなしに、明日死んでもいいように毎日を本気で楽しんでいます。
「明日なにがあるかわからない、今を楽しむ」
これが母に教えられた最後の財産なので。
そしてカナダ生活の1年間で学んだこと、
・「自分で自分の限界を作らないこと、そしたら大抵のことは俺ならできると自信をつけることができたこと。」
・「どんなに辛いと感じても、母親が感じていた辛さを超えることは絶対にないと思えるようになったこと。」
色んな壁にぶち当たってきては自分なりに乗り越えてきたカナダ生活でしたが、
かといって未だに自分の力でどう社会に貢献できるかまったくわからないし想像ができない、就活を控えている学生としては失格そのものかもしれないけど、当初の大企業に就職しなければならないんだ、っていう変な執着心は無くなった。
高学歴の人たちに比べると、たいした脳みそは持っていないが、がむしゃらさと反骨心なら誰にも負けないっていう自分の強みを評価してくれる人がいて、そういう人と働けたら光栄だな、と。
自分がやりたい仕事を、現時点では明確にすることはできていないが、尊敬できる人、この人と一緒にいたら楽しいと思える人と働けるならば、どんな仕事だろうが最高の人生を送れるのではないかと自分なりに分析しています。
というかそういう人と働くこと、それが今の自分が最もやりたいことなのかもしれない。
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