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平凡な会社員が、“脳出血で倒れて働き方を考え直した”話【第十二回】

前話: 平凡な会社員が、“脳出血で倒れて働き方を考え直した”話【第十一回】

リハビリの先に見えてきたもの。

その日のリハビリは、まだ苦労していた作業療法の日だった。

先の患者さんの訓練が少し遅れており、リハビリの先生を待っている間、手持ち無沙汰の僕はリハビリ室の窓からわずかに見える外の空を眺めていた。



緊急入院してから約1ヶ月。あっという間に時間が過ぎていた。

ずっと室内にいたので、僕は季節感を無くしていた。課長からの携帯メールで今年は特別寒いことを知ってはいたが、窓が結露していたのをみて改めて外は寒い真冬になっていたことを感じていた。


ベットの上で寝たきりだった12月から考えると、今こうして自力で病室からリハビリ室まで移動してきて椅子に座り、リハビリをうけられる様になっているだけでもかなりの進歩だった。

1ヶ月でここまできたんだ。
きっと回復の望みはある!

僕は、自分にそう言い聞かせて目の前の作業に集中することだけを考えていた。

リハビリを重ねていくと昨日できなくて悔しい思いをしたことも、今日は少しだけ出来るようになっていった。

健康な頃は気にもとめずに簡単にできていたことではあったが、苦労して訓練を重ねることで少しづつ出来るようになっていく。僕の中ではこれは本当に大きな進歩であったし、少しづつ健康な頃に近づいているという実感が得られることだけが、唯一の希望でもあった。



大体、地道な努力をすることが苦手な僕だったが、リハビリを終え部屋に戻ってからもお箸の練習だけは欠かさなかった。

思うようにお箸を扱えない悔しさと不便さももちろんあったのだが、お箸を自由に操れるようになった先に、何となくぼんやりとだが、社会復帰ができている自分の姿を見ていたような気がする。


春には何とか社会復帰してみせる。


僕の中で、そんな希望が少し芽生えてきた。

そして、先生から退院の時期が告げられたのも、この頃だった…。

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Hatakeyama Kaori

はじめまして。脳内出血で倒れてICU入りし、1週間前に退院したばかりの者です。脳幹近く?に海綿状血管腫があり第四脳室へ出血が滲み出てしまってました。後遺症は少なめで手術無しで退院出来ましたが、再出血に怯えがないとは言えません。平田さん、退院されてから7年程かなと思いますがお身体はいかがですか?お大事になさってくださいね。13話以降も楽しみにしています。

平田 浩規

Hatakeyamaさん、はじめまして。コメントいただきありがとうございます!無事退院できて本当によかったですね!!私は、右半身の痺れが未だに後遺症として残っていますが日常生活に支障を来す程ではないので、運が良かったなぁと思っています。確かに再出血の怯えはありますが、あまり気にしても何ですのでムリをしそうになったらなるべく休むようにだけ心がけています。多分、周りには迷惑を掛けていますが、”命には替えらない”と言い聞かせて、前よりちょっと我儘に暮らす今日このごろです。Hatakeyamaさんは、まだ退院1週間であれば日常生活に戻るためにいろいろ大変かと思いますが、きっと大丈夫です。生還できたことがその証拠だと思います!STORYはもうちょっとだけ続きます。なかなか進んでいませんが、また、読んでやってください。ではまた!

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