元引きこもりのクズ学生が、一念発起して外国にも行かずに4ヶ月で英語ペラペラになった話。
外国にも行かず、英語を身に付けることは誰だって出来る。
僕は、こう信じて疑わない。
なぜなら、僕自身がその経験をしたからである。
中学生から高校生までの僕は、まごうことなきクズ学生であった。
中学時代は引きこもり、家庭内暴力と自傷行為を繰り返した。
高校生になっても引きこもりが治ったぐらいで、腐った人間性はちっとも変わらず。
相変わらず全く勉強せず、ただボケーッと時間が過ぎるのを待つ無気力な学生だった。
ほとんどの教科がチンプンカンプンで、授業は基本的にお絵かきの時間。
お蔭で絵の能力だけは飛躍的に向上したものだ。
高校三年生の進路相談。
「大学行きたいです」と言った僕に、呆れ顔の担任はこう言った。
「あのなぁタケよ…。まず留年せずに高校を卒業することから考えろ」
ごもっともな意見だ。
数学や物理など、苦手な科目は基本的に0点。
まともに勉強したのは数年前という惨状であった。
僕が留年せずに卒業出来たのは、担任の温情と、元トップ営業のオヤジの交渉術のお蔭に違いない。
今度オヤジに会う時は、当時の交渉術について話を聞いてみようと思う。
さて、そんな状態だった僕は当然、現役時はどこも受からなかった。
浪人時には多少勉強するようになったが、元の学力があまりに低すぎた為、どの大学も受からない。
聞いたこともないような大学にすら受からなかった。
たしかどこかの大学の夜間にも落ちたと思う。
「神様仏様、今まですんませんでした。更生するので、どうか受からせて下さい…」
最後の試験となった、立命館大学の試験。
これに落ちたらフリーター決定と、親には言われた。
自分の過去の愚行を恥じつつ、試験までの2週間、一日15時間は勉強した。
その結果。奇跡が起きた。
なんと前日に見た問題がそっくりそのまま出題されたのだ。
この奇跡のお蔭で、僕は晴れて立命館大学に合格した。
結局、僕が受験した中で最も難関の大学に受かったのである。
しかし、手放しで喜べる状態ではなかった。
まず、マグレでの合格である為、学力が大変に低かったのである。
教授が当たり前のように話す内容が、おバカの僕には理解不能だった。
特に、帰国子女を多く抱えるクラスでの英語の授業が、苦痛そのものだった。
さらに、家庭の事情により、アルバイトで学費を稼がねばならなかったのだ。
それまで一度も働いたことがなかった僕は、大学入学と共に力仕事を始めたのである。
元来超がつくほどナマケモノの僕にとって、この労働は大変こたえた。
さて、立命館大学は、比較的裕福な学生が多い。
私立だから当然かも知れないが、学生と話しているとストレスを感じることも多々あった。
(親から仕送り20万やと?どこからそんな金が湧くんや…)
(クソッ、バイトもせずのうのうと遊びやがって…)
(こんな遊びほうけてるヤツらでも喋れてる英語を話せない俺って…)
今考えれば、中学生から高校生まで何の努力もせず遊び倒した僕よりも、彼ら学生は数百倍まともな人生を送っていたに違いない。
失礼にもほどがありすぎる。
もし当時にタイムスリップするならば、僕は「お前が言うな」と開口一番言うであろう。
ただ、当時の僕は、彼らと自分の身を比較し、怒りすら覚えた。
あまりに高い学費を負担する為、両親は身を粉にして働き、僕も必死に働いていた。
今まで迷惑をかけてきた分、少しでも両親を楽にさせたかったのだ。
ちょっと身勝手なものだったが、そんな怒りがバイトへの原動力になったと思う。
そんな中知ったのが、優秀な学生を対象にした奨学金制度である。
大学の成績上位数%の僅かな学生に、返還の義務がない奨学金が付与されるのだ。
「きっと勉強で結果を出せば、親は喜ぶに違いない」
「さらに奨学金をもらえるとなれば、家計にも大きく貢献できるで」
こうして僕は、奨学金ゲットの為に頑張ることを決めた。
その中でも重点的に取り組もうとしたのが、苦手かつ多くの授業に関わってくる英語である。
ただ、「勉強?何それおいしいの」状態の僕である。
まずは大阪梅田の紀伊國屋書店にて、英語の勉強法について書かれた本をしこたま立ち読みした。
活字とまともに格闘したのなんて、何年ぶりだろう。
頭が痛くなりつつも、その頭の痛みを心地よく感じる自分がいた。
「あぁ、俺って今、勉強してるんやな!!」
かれこれ10冊ほど読んだだろうか。
すっかり英語の勉強法マニアになった僕は、何となく「出来る」という確信めいたものを感じるようになった。
ただ、当時の英語力は、TOEICにして400点ほどというお粗末なものであったが…。
「どうせやるなら不可能に挑んだる」
「半年間で英語ペラペラになったる!!」
「帰国子女のヤツらのレベルは難しいかもやけど、1年か2年留学したヤツらを抜いたるねん」
メラメラと闘志が燃えた。
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