④私が「私に暴力を振るい続けた死にゆく母を笑顔で見送るべきか(長文です)」と知恵袋に書き込んだ者です。
「死ね」「もう二度と顔見せんな」
私は小学4年生から、両親が母方の祖父母と家を建て同居し始めるという理由で、仙台郊外の小学校へ転校することになった。
私の両親は何度も祖父母の家に足を運び、新しく建てる家の間取りについて話し合っていた。家の間取りは1階にリビング・キチン、トイレに風呂場に爺ちゃん婆ちゃんが寝る和室。2階に家の中で最も大きな両親の寝室。廊下を挟んだ一部屋を私の部屋にしてくれるという。9畳で出窓とクローゼット付き。なかなか良い。
その隣には5畳ほどの日の当たらぬ、薄暗い部屋ができる。トイレが隣にある、使い勝手の悪い部屋だ。そこを物置小屋にするという。
まさか、そこが結果的に私の部屋になろうとは知る由もなかった。
家の中で私が、唯一居ることを許される場所。私はそこにしか居てはいけない、『私隔離部屋』。
3年生の終わりに、転校していく私へ25人のクラスメイト達がお別れ会を開いてくれるという。
お別れ会の出し物は椅子取りゲーム、ハンカチ落としや皆が一生懸命考えてくれ練習してくれた人形劇なんかを見た。最後のほうにはクラスメイト一人ひとりが、私への「新しい学校でもがんばってね」的な応援メッセージを発表してくれた。
みんなが書いてくれた色紙と、『元気の出るくすり』というラベルを貼られた茶色く大きな瓶(おそらくコーヒーのクリープの空き瓶)も貰った。
その瓶の中には飴のようなものが沢山入っていた。実はそれらは、小さな紙に私への一言メッセージを書いては折りたたんで、色とりどりのカラーセロハンで一つ一つ包まれた小洒落たプレゼントだった。
私は嬉しくなった。
一体何十個の『元気の出るくすり』が入っているのだろう? クラスメイトは一人当たり何枚も応援メッセージを書いてくれ、瓶に入れてくれたようだ。
私はお別れ会の後、飛ぶように家に帰り、母親に貰った色紙と瓶を見せた。その時の反応は「ふーん。良かったね」だ。奴の反応はどうでもいい。私は急いで瓶のフタを開け、クラスメイトからのメッセージを読み始めた。
「新しい学校でともだち100人、作ってください。おうえんしています。」
「ミカちゃん、今までなかよくしてくれて、ありがとう。またあそびにおいで。」
「みかん、またいっしょにあそびたいよ~。」
などなど、友達からの優しい言葉が励みになる。新しい学校での新生活に胸躍る。
「ミカちゃん、たんじょうびかいにはまた、あそびに来てね、まってます。」
「大好きだよ、忘れないでね~!」
と、読み進め10個めくらいに開けたセロハンの中に、
「死ね」
と殴り書きされたような文字…ん!?
次に開けたセロハンには
「もう二度と顔みせんな」と、強い筆圧で書かれていた。
怖くなって全てのセロハンを開けてみると、「死ね」のメッセージは他に3枚紛れ込んでいた。全部同じ筆跡で。
『加賀君だ』
私にはすぐにわかった。
3年生で初めて同じクラスになった加賀君は、私の机の隣に座っていた。
いつもよれよれの茶色い長袖Tシャツを着て寝癖が付いている。季節に関係なく青っ洟垂らして鼻ほじくって、指に着いた鼻くそを眺めては口にする気持ち悪い奴だった。
そいつは毎日色んな科目の教科書を忘れてくるもんだから、隣の私が奴に見せてやらなきゃいけない。消しゴムも忘れてくるし、給食はぺちゃくちゃ音を立てて食べる。
私は口にこそしなかったが、彼が嫌いでならなかった。
覚えてはいないが、女友達と話しているときに彼の悪口を言っていたのかもしれない。それを彼は聴いていたのだろうか?もしかして、顔に出ていたのか。
授業で先生に答えを聞かれても何一つ答えられなかった加賀君。2Bの鉛筆なのに筆圧を手加減しないもんだから何度もノートを破いてた加賀君。ティッシュも持たずに鼻水垂らしっぱなしでボケ―っと遠くを見てとても頭の悪く見えた加賀君。
でも実は、加賀君は人の気持ちを読める、私よりずっと頭の良い奴だったのかもしれないと、今となっては思う。そして私はそんな彼をあからさまに嫌う素振りを見せていたのだろう。
私の親が毒親と変貌したのは、それに対しての天罰だったのだろうか…?
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