「また明日!」を言わなくなった… 【其の八・婚姻届】

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【たかが紙切れ一枚、されど…】

結婚式はお互いに「めんどくさいもの」としてしか考えていなかったので行わず、役所へ婚姻届を提出すればそれで全てが終了。

たったそれだけを残すところまでやってきました。

ただし入籍をした時点で、購入した家や契約した保険等の名義変更をしなければならないという雑務は残されていましたが…

通称「入籍日」(入籍という言葉には本来別の意味があるようです)

世間的に浸透しているイベントデー(クリスマス、バレンタインetc)にするという方法もありますし、どちらかの誕生日にするという手もありましたが、梅雨も間近な時期でしたのでどれにも当てはまらないタイミングだったのです。

なかなか決まらない婚姻届の提出日。

そんな折、私の母が「こういうのはどう?」と提案をしてきました。

「新月」

新しいことを始めるには良い日だという説もあれば、全くその逆であるという話もあるという、何とも信ぴょう性には乏しい「縁起のよい日」。

もっとも日付を決めるようなポイントも見つからず、そこまで大きなこだわりもありませんでしたので、その提案に乗っかってみることにしました。

たまたま直近の新月は、月違いながらも相方の誕生日の日付に合致したのでそれもまぁよいであろうと。

婚姻届。

二枚手元に取り寄せ、一枚は下書き。

もう一枚を提出したわけですが、下書きはまだ家の何処かに眠っています。

こんな薄っぺらい紙切れ一枚で、人生が色々変わっていくのかという不思議な気持ちにもなりました。

厚みはないのにとてもとても重い一枚。それが婚姻届です。

婚姻届を提出した時には、新居での生活もだいぶ落ち着いていた頃だったと思います。

最初の頃は「自宅へ帰る」というよりも「自宅を訪れる」という何とも妙な感覚でした。

住めば都という喩えは正しくないのかもしれませんが、毎日を繰り返していると自然と慣れていく、やがて自分が一番落ちつける場所になっていく、家というのはそういうものなのかと。

どんなに立派な豪邸でも、そこで人が暮らしていなければ家は呼吸をできない。

どんなに狭い小さな家でも、そこに人の生活があれば家には生命力がみなぎる。

そんなことをぼんやりと考えていたかもしれません。

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