なんちゃって外資系 その10 終幕

前話: なんちゃって外資系 その9 そうは言ってもいる編

ここまで外資系企業の特長や日本企業と変わらない点について書いてきた。その間にも三菱自動車の燃費データ捏造で外資に売却されるのではという噂も流れている。

考えて見てもらいたい。経営不振の企業が外資に売却されたからと言って何故再建が進むのだろうか?

シャープの場合、ホンハイの資本注入に期待をした訳だが、資本を注入するぐらいで立ち直るなら今まで銀行団が融資を続けてきたのと何が違うのであろうか?

ホンハイ自身は世界の組立工場としてアップルの様な欧米の企業から製造委託を受けている会社だ。

製造技術自身もメーカーから供与される場合が多い。

ホンハイの役割は安いコストで物を生産する事に尽きる。開発・研究もブランドも関係無かった。

よってコストを下げる為に、大量一括発注をして材料費を下げ、長時間安い給料で従業員を働かせる事によって労務・人件費を下げて来ている。

実際、本国台湾や生産拠点の中国では常に労働争議や労働問題が起きている。

ホンハイも現在の低コストによる製造委託のビジネスモデルに限界が来ている事は十分に認識しているはず、シャープの技術と高いブランドを手に入れたい理由もそこにある。

しかしROI(投下資本への収益率)に厳しいホンハイが技術とブランドだけの為に数千億円を投じるだろうか?

当然、不採算部門の切り捨て、非関連部門の売却、人員の整理によってリターンの最大化を求めるだろう。


一方、中国系のレノボ。IBMのパソコン分野を買収したのは随分と前。

Think Padの商標権を買収後5年間使用できるんなど今回のホンハイのシャープ買収の目的の一つであるブランド力の強化も当初の買収目的の一つであったと思われるが、IBMの大和研究所をR&Dの拠点として残し、かつ後にパソコンの分野で提携したNECの米沢工場を生産拠点として加え、「日本開発、日本製造」を前面に出した戦略を取っている。

ちなみにレノボの実質株主が中国の政府機関である中国科学院である事は余り知られていない。


この元はと言えば中国を起源にする2つの会社が一見正反対の動きを取ろうとしているのは何故だろうか?


一因にはIBMの従業員は優秀であるとの「神話」ともなっている評価である。

幹部連中は英語にも強い。また計数とロジックにも強い。

組織とプロセスの構築に強い。

業界広くに人脈を構築している。(退職者、転職者とも絆が強く、お互いにサポートし合う)

元々、外資系企業である。


一方のシャープ。IBMの社員に言われている点にどれ程当てはまっているだろうか?

残念ながら一部の人達を除いて、英語に弱く、計数・ロジックにも弱く、組織とプロセスにも弱く、となっていないであろうか。


IBMの社員は「人材」であったが、シャープの従業員は「労務費・人件費」と捉えられる性格が強い。

自身が将来、「人材」、「労務費・人件費」のいずれに分類されるかは何も外資系企業に務めたかどうかにはよらない。むしろ日系企業に勤務しながらも外資系企業で評価される特性を磨く事は決して難しいことでは無い。

それは日系企業で20年に亘って勤務した後に外資系企業2社でファイナンスのトップを張っている私という例がいる事からもお分かり頂けると思う。

外資系企業になってしまった時に「なんちゃって」と余裕がある人達がもっと増えて欲しいと願っている。


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