ファイナンス入門 (6) 税金のお話
「租税回避」とか「タックス・ヘブン」と言う言葉が新聞紙上を賑わしている。そこに降って湧いたように現れたのが「パナマ文書」。世界上の有名人がタックス・ヘブン国に財産を溜め込んでいることが明るみに。
昨年、アメリカの製薬大手ファイザーがアイルランドの同業アラガンを買収する事を発表。
驚きは規模で勝るファイザーでなくアラガンが存続会社となる事。
この狙いはアイルランドの税金が安いメリットを活かそうとしたもので、アメリカ国内は元より世界中で物議を醸し出した。
アメリカの法人税率は40%と世界でも最も高い国の一つ。
対してアイルランドの法人税率は12.5%。安いと思われるかも知れませんが企業はもっと考えた。
「ダブルアイリッシュ・アンド・ダッチサンドイッチ」
元々は「アップル」が導入したが、後に「マイクロソフト」「グーグル」などのIT企業が追随。
簡単に言うと「各国の租税法、租税条約の抜道」を利用。
企業の国際化のために求められたのが国と国の間の課税の明確化。
もっと言うと「二重課税」の回避。
せっかく海外に進出して事業を行っても、その利益に誰が課税権を持っているのか、その利益を国境を越えて動かしたらどうなるかが分からないと企業は税引後の利益が確定出来ず困ってしまう。
そこでこの二重課税を出来るだけ防ぐ事が各国の税法に取り入れられたり、利益の移動に関する源泉税の軽減や免除が租税条約に入れられる事となった。
所がどこにでも「穴」があるもので、組み合わせ方次第では、「無課税」の状態が作り出せるようになった。
少し複雑なのですが図にでも書いてもらうと分かり易いかも。
アメリカ企業がアイルランドに実態の無い企業Aを設立する。実態が無いとは管理支配はバミューダの会社にすること。アイルランドでは実態の無い会社には課税されず、バミューダでは実態があっても課税されない。
この企業Aにアメリカ企業が特許などの無形資産を移して、更に企業Aは子会社の企業Bを設立して無形資産に関するサブライセンスを与える。
ここでアメリカの税法にある「チェック・ボックス・ルール」が登場。
これはアメリカの法人税の申告書のある部分にある□をチェックすると、その海外会社とその子会社の利益はアメリカに入らない限りアメリカで課税されないと言うルール。
この企業Bがアメリカ以外での商売を行い利益を上げる。
この利益の大部分をロイヤリティーとして企業Aに支払うが、その際に別に設立した実態の無いオランダに設立した会社を通してバミューダの管理会社へと移す。
アイルランドとオランダの間のロイヤリティーの支払いには源泉税が掛からないし、オランダでもロイヤリティーは課税されない。
こうして一回、バミューダにお金が入ってしまうとアメリカの課税権は及ばないことになり、多額の税金を免れた資金がバミューダに眠ることになる。
あまりにもの反響の大きさにアイルランド政府もついに新たな本スキームの構築を禁止。
アマゾンなども各国の税務当局と納税をする交渉をしている。
これらの例は決して違法では無い、が公平性という点で皆んなの指示が得られなくなったとの例。
しかし企業は収益性を上げることが使命のため、今後も税法の「穴」をついていく動きは続くと思われます。
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