ファイナンス入門 (7) タックスヘイブン

前話: ファイナンス入門 (6) 税金のお話
次話: ファイナンス入門 その(8) クラウドファンディング

引続き税金のお話。今回は"タックスヘイブン"。

タックスは税金、ヘイブンは天国。

よってタックスヘイブンは文字通り「税金天国」。もうちょっと正式に言うと「租税回避地」。

課される税金がゼロか極めて低い地域や国を意味する。

古いところではパナマ、リベリア、ケイマンなどが挙げられ、バージニア諸島、欧州の小国にも見受けられる。


その起源は税金の発生の時期と同一と言われておりローマ教皇領や、12ー14世紀のイギリスでの寄港船への免税、13世紀のハンザ同盟加盟国間とも言われている。

その後、1950年代になっての「ユーロダラー」(米国外で流通するドル)市場の発展により、国際的な金融取引センター(オフショア市場とも言う)を誘致しようとしたカリブの小国が相次いだこと、また所謂便宜置籍船の登録国として発展した。


特徴としては会社の設立・運営が用意であること、為替管理が緩いこと、法制がしっかりしていること、情報開示が極めて少なくて済むことが挙げられる。

会社の設立については弁護士事務所の弁護士名で簡単に設立された会社を買うことができる。

これらの弁護士事務所に行くと、おびただしい数のポスト。設立された会社の私書箱だ。

会計上の通貨も米ドルでも日本円でも可。

オフショアの口座を持てるので自由に資金を出し入れできる。為替管理が厳しい国、例えば中国などでは一旦出資した資金や利益を持ち出すのは至難の技。

所有権、担保権についての法制がしっかりしていないと資産の確保に支障がでる。例えば銀行から資産を担保に資金を借入れる場合である。

情報開示が少なくて済む。これが他の国の税務当局からの調査、情報提供依頼があった場合の壁として働く。


税金を払わないで済むならこれらのタックスヘイブンの国々にとってはどの様なメリットがあるのかと思うかも知れない。

これらの国々は出資者の母国に比べると安価ではあるが会社設立に際して登録税、印紙税、手数料を徴収する。

また世界中から弁護士事務所、金融機関等の進出が見込まれ、そこから雇用も生まれる。


かつて所属した海運業界では早くからパナマ、リベリアなどの所謂ペーパーカンパニーを設立して船舶をそれらの国籍に登録。登録税や年間の税金が日本籍にする場合に比べて大幅に安かったからだ。

また日本籍にすると全日本海員労働組合の船員を乗せる必要があったが、便宜地籍国であればその必要がなく、フィリピン人やビルマ人の安い船員を乗せることができた。

船舶の登録、お金を借りる時の担保権の設定も簡単にできるが、万一返済が出来なくなった場合の差押えなどの制度はしっかりとしており銀行も安心して融資をすることができた。

海運業は市況産業で収益の浮き沈みが激しい。

好況の際の利益、船を売った際の利益を溜め込みたいというのは自然の欲求。


しかし各国の税務当局も黙っていたわけではありません。

日本の場合、税率20%以下の国は「タックスヘイブン」国と認定され、利益が出れば日本に利益を持ち込まなくとも日本の親会社の利益に加算されて税金を納めなければならない様に決めました。

現在、「タックスへ」として認定されている国には上述のパナマ、リベリア、ケイマンの他にもシンガポール、香港等の経営の実態を持つ国々も含まれます。


その為、直接にタックスヘイブン国に出資するのでは無く他の国を経由して利益を流し込むことが行われます。それが前のお話の租税回避の問題です。



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ファイナンス入門 その(8) クラウドファンディング

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