バーボンストリートでバーボンも飲まず (2)
早朝までバーボンストリートで飲み過ぎたせいで日本に帰国する飛行機に乗り遅れてしまった。
「え、え。どうしたら良いんですか?」
迎えに来てくれた運転手に尋ねた。
「さあ、航空会社のカウンターの係員にでも聞いてみるんだな。」
空港に到着すると重いスーツケースと共に運転手が指差す方向へとダッシュ。
そこに目指すカウンターがあった。
座って居たのは白人のおばさま。
一部始終の顛末を話すと大きな身振りを交えて、「ノープロブレム。」と。
「次のフライトを取ってあげるから。但し、ダラスでの乗換時間は30分しか無いからダラスに着いたらダッシュして搭乗口へ向かうのよ。」
そのおばさまが天使に見えたのは言うまでも無い。
何とかダラス行きの飛行機に乗り込んだものの、到着した後の事を考えると気が気では無い。
実際に飛行機がダラスに到着し下船した後で確かめると、搭乗口は空港の正反対の端。
気が動転していたので、兎に角走るしか無いと猛ダッシュ。
しかし走っても走っても中々お扇の要の所にたどり着かない。
その時、クラクションが鳴って振り返ると同じ飛行機を降りた乗客がカートに乗って通り過ぎていく。
(そんなんがあるなら言ってよ‼️)
走り去るカートにを追う様に足を運ぶが何だかおかしい?
足が妙に絡まる気がする。靴紐でもほどけたかな?
と、足元をを見てビックリ‼️
何とホテルを出る時から左右のスニーカーを反対に履いていたのだ。
急いで履き替えて搭乗口へと急ぐ。もう間に合うかどうかギリギリ。
滑り込む様に周りに日本人が一杯いる場所にたどり着いた時には安堵で座り込んだ。
その時、「成田新東京国際空港へお向かいのお客様にお知らせします。
当機は到着が遅れた為にお客様へのご搭乗のご案内は1時間程遅れる予定です。」
(そんな〜。そう言う事は乗継機が到着した時に言ってよ!)
無事に予定の帰国日に日本に到着。翌月曜日から東京本社に出勤。
忙しい日々が再び始まった。
そしてあれから約30年。
勤める会社も2社変わり、アメリカの会社の日本法人に勤めている。
そして新年の三が日も明けない内にグローバルのイベントがニューオリンズで開かれることになり、約束30年ぶりにニューオリンズの地に降り立った。
宿は30年前に一人で歩いて行ったスーパードームの隣。
乗継のせいで遅い到着となったがチェックインを済まして2階へと登って行くと、そこにあるレストランに同僚の顔。直ぐにジョインして生牡蠣やらピザとビールを流し込む。
明日は朝6時から朝食。そして昼食、夕食とも同じ会場で千人以上。
メニューは基本的に同じ。野菜、お肉、パン、デザート。
お肉が鳥だったり、豚だったり、牛だったり羊だったり。
原則、外に出掛ける時間は無いのであるが、唯一1日グループディナーで外に繰り出して良い日があった。
誰かが歴史のあるレストランを予約してくれ皆んなで繰り出す。
途中、見覚えのあるバーボンストリートを横切る。
レストランはどこか東京デズニーランドの様な趣(むしろ東京デズニーランドがコピーしているんだった!)。
エスカルゴや懐かしのガンボスープ。そしてメインはそれぞれの好みで。
ワインもそこそこ頂いたところで明日の朝もまた早いので帰途に着いた。
帰り道では再度バーボンストリートを横切る。
(そう言えばバーボンを飲んでない)
その時、あの30年前の場面が生き生きと蘇った。
(まあ、一生分のバーボンを飲んじゃったからな)
結局、今回の旅ではバーボンを飲まずじまい。
年齢や仕事の事を考えると仕方がないのかも知れない。
そう、次に仕事で無くこのニューオリンズを訪ねる時には、心置き無くバーボンを転がしながらジャズに揺れてみたいと思う。そんな日はそんなに遠く無い様な気がする。
著者のTachibana Toshiyukiさんに人生相談を申込む
著者のTachibana Toshiyukiさんにメッセージを送る
著者の方だけが読めます