生後1時間で、赤ちゃんがどうしてしゃべり始めたのか? 《驚異の胎教 vol.1》
「これ!」
ハッキリとこう言いました。とても冷静な表情で、確信したように。
これは、2000年の とある夏の朝、あんずが生まれてわずか1時間後の出来事です。
顔も身体も真っ赤で生まれてきたあんずは、分娩室を通り越して響き渡る大きな声で泣いていました。
身体をきれいに拭ってもらった後、さっぱりとした表情で私の待つ病室にやって来たのは生後1時間のことでした。
私はベッドに仰向けに横たわったまま、あんずを胸の上に抱きました。まだ目もハッキリと見えないであろう彼女は、しきりに探し物をしていました。
その時、テレビの動物番組で見たことのある場面が頭に浮かんできました。赤ちゃんパンダが母親の胸を目指して、虫のように小さい体で母親の体を健気に登っていく場面です。
おっぱいを必死で探すあんずの姿と、その場面が何故かオーバーラップしていました。
それにも拘らず、ちょっとイタズラ心が湧いてきました。
わざと見つけにくいように身体を離してみたのです。
それでもあんずはひたすら探しています。
なんだかとっても可哀そうになって胸に近づけてあげました。
ようやくおっぱいに辿りついて口に含みました。
吸い始めるんだなと思いました。
ところが、どうしたことか一旦口を離しました。
そして言ったのです。
「これ!」
探していたものだと確信して、ようやく落ち着いたのか吸い始めました。
やっと見つけた時、「探してたものはこれなのよ」と言わんばかりに、わざわざ口を離して「これ!」と言いました。
私は確かに聞きました。
でももしかして空耳?
次々と来てくれる見舞いの家族や親戚と談笑しながらも、頭の中ではこんな問答を繰り返していました。
しかし空耳ではなかったことを証明する出来事が起きたのです。
その出来事が起きたのは、あんずが生まれたその日の夕方のことでした。
学校や保育園から帰った上の子たちを連れて実父がやってきました。
あんずがお腹にいる時から、 「おはよう。お兄ちゃんですよ。」
「生まれてきたら、お姉ちゃんと一緒にこのお菓子食べようね。」
と、お腹を撫でながら、毎日毎日慈しんでくれていたお兄ちゃん、お姉ちゃんです。
お兄ちゃん、お姉ちゃんに、ほっぺや手足を撫でてもらっているあんずは、とっても安心したような落ち着いた表情をしていました。
子供たちは
「もう遅いから、そろそろ帰ろうか。」と言われても、
「もっと、あんずちゃんの側にいたい。」
「今日はあんずちゃんと一緒に病院でお泊まりする。」
となかなか聞き分けません。
数十分たって、
「明日絶対にまた会いに来る!」というお約束をして渋々帰って行きました。
3人が帰って行ったすぐ後のことです。
あんずが大きな声で泣き始めました。
でもその泣き声は、何かを訴えているようでした。
そこで、よく耳をそばだてて聴いてみました。
なんと、
「さ〜や〜ちゃ〜ん、
さ〜や〜ちゃ〜ん」
と呼んでいます。
泣きながら何度も何度も呼んでいます。
さやちゃんというのは、姉のさやかのニックネームです。
さやかは、いつもお腹に顔を寄せて、あんずに優しい言葉をかけていました。
お腹を撫でたり、絵本を読み聞かせたり、それはそれは楽しそうに可愛がっていました。
臨月が近づいたある日、いつものように、さやかがお腹に頬を当ててお話している時、私の胸は、何とも温かく言いようのない幸せな気持ちに包まれていました。
『あんずはさやかのことが大好きなんだわ』と直感的に感じました。
そして、この出来事です。
お姉ちゃんと妹は、この数ヶ月の間にしっかりと心を通わせ、大の仲良しになっていたのです。
それにしても
新生児がお腹の中で既に言葉をしゃべる能力を獲得し、
姉を認識できるだけでなく、
姉がそばにいなくなって淋しいという感情まて発達させている、
とても衝撃的でした。
ストーリーをお読みいただき、ありがとうございます。ご覧いただいているサイト「STORYS.JP」は、誰もが自分らしいストーリーを歩めるきっかけ作りを目指しています。もし今のあなたが人生でうまくいかないことがあれば、STORYS.JP編集部に相談してみませんか? 次のバナーから人生相談を無料でお申し込みいただけます。
あなたの親御さんの人生を雑誌にしませんか?
著者のNaito Hidenoさんにメッセージを送る
著者の方だけが読めます