流れに任せて遊んでいたら、大好きなNYに住めるようになった話。#3 大混雑の空港にこだまする「ビッチ!」の怒鳴り声
小走りでその人の元へ行き、「日本人の方ですか?」とおそるおそる尋ねる。「そうです」と返事が帰ってきて安心する。
機械の使い方を教えてもらい、タッチパネルを操作して最後に顔写真を撮り、チケットが印刷されるのを待つ。寝ぼけた顔をしたわたしが映ったチケットが出てきた。
しかしそのチケットはなぜかおおきなバッテンマークがつけられていた。
あの、これってどういう………?
とさっきの日本人に聞こうとしたが、彼はもうすでにゲートに並んで先の方に行ってしまっていた。
これ、やり直しってことなのかなあ?あたりを見渡すと、発券を終えて列に並ぶ人の手に、バッテンがつけられたチケットが握られているのを発見!
このバッテンにも何か意味があるのかもしれないと、それを持って列に並ぶ。
しばらく観察したところによると、どうやらバッテンを食らっていない人は、列から抜けるように言われ、空いている別のゲートへと促される。 あまり詳しい審査が必要ない、安全な人らしい。
一方わたしは思いっきりバッテンマークを食らった「怪しいやつ」なので、審査の時間がかかる列にい続けることになった。
審査員は複数いるのだけど、いかんせんわたしの並んでいるゲートはひとりひとりの審査に時間をかける。なので必然的に列も動きが遅くなり、待ち時間も長い。
一向に進まない列にうんざりしながら並び続ける。
14時間のフライト後に、この待ち時間は辛い…。いったいいつになったら審査官の元へ辿り着けるのか見当もつかないくらい動きがにぶい。
1時間半ほど並んだ頃だっただろうか。わたしが並ぶすぐ横の列から男性の大声が響いた。
驚いて声のする方向を見てみると、派手なピンクの柄シャツを着た一癖も二癖もありそうな男性が、ドレッッドヘアーの黒人女性係員に向かって声を荒げている。


彼の大声の主張によると、彼は列に並ばなくていいような、なにかしらの許可のようなものを受けているらしく、それを女性係員に伝えて列を抜けさせてもらえるよう言ったらしいのだが、係員は「あなたは列を抜けることができない。みんなと同様、列に並べ」と言ったらしい。
列に並ばずにすむはずだった彼は、「そんなはずない!ちゃんと俺の説明を聞け!」と声を荒げていた、というわけだった。
男性は相当怒って何度も説明しているようだったが、女性係員は一向に聞く耳を持たず、しまいには彼を無視して知らんぷりを決め込んだ。そんな係員を彼はいまいましげに見つめながら、最後は黙って列に並んだ。
男性が黙ったのでみんなの注目もやみ、さっきと同じく、退屈な待ち時間がやってきた。
かれこれ2時間以上は並んだだろうか。ようやく次でわたしの番だ。
長かった。ああ、長かった。後ろの距離感の取り方が下手くそすぎる中国人が、何度もわたしのリュックにぶつかってくるのにイライラしながらも、よくこの時間を耐え抜いたよ…。がんばったね、わたし。と心の中で自分を労っていると、またもや大きな声が後ろから聞こえてくる。
振り返るとまたさっきの彼だ。どうやら他の係員に抗議をしようとしたのだけど、それを見つけたさっきのドレッッドヘアーの女性係員が、

と別の係員に言い放ったようなのだ。
それを聞いた男性はよりいっそう声を荒げ、

と皮肉いっぱいに女性に向かって吐き捨てた。
女性も皮肉いっぱいに

と返す。
すると男性がフロア中に響き渡る声でこう言った。
このビッチが!!!!!!
今までは上から目線で、男性を小馬鹿にしたような態度だった女性係員だが、これには怒りをあらわにしたようだった。



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