才能がない、という才能|自分軸が見つかるまで
何回も聞いたことがあるセリフだが、この時ほどこの考え方が腑に落ちた瞬間はない。
僕はいつの間にか、「大阪進出の失敗」を勝手に頭の中で「才能がないことの証明」に書き換えてしまっていた。
大阪での事業が思い通りにならなかったのは事実。ただし、それを自分がどう解釈するかで、自分の過去も、今も、そしてその延長上にある未来すらも決まってしまう。
だとしたら、この経験が自分の未来にとって、どれだけ意義のあることだったのか、その意味づけを変えようと思った。
そこで僕は、大阪での経験で失ったものではなく、得られたものにフォーカスをして、自分の未来につなげるようなものがないかピックアップしてみることにした。
その中の一つに、本業とは異なる分野での活動ではあったが、演劇のワークショップをやった時の気づきがある。
心の「ざわつき」に気づくことの重要性
ワークショップの参加者の中に、「自己表現」とは対極にあるような、ものすごく内気そうな50歳くらいのおばちゃんがいた。その人は最初「いやいやもう私が演技なんてそんなん無理やわ」というスタンスだったが、いざ始めてみるとこれが面白いもので、
一番輝いたのはそのおばちゃんだった。
そのおばちゃんはフィードバックの中で「自分でもこんなにハツラツとした表情になれるとは思いませんでした」と言っていた。
この時にそのおばちゃんは間違いなく「私、もっと自分を表現していいんだ」って思ったはずだ。
詳しくは聞かなかったが、きっとあのおばちゃんは、周囲の目を気にして本当になりたい自分を押し殺すような人生を過ごしてきたのではないかと思った。
演劇、またはお芝居というものは世間一般的には「観るもの」だ。しかし、僕にとっての演劇の役割は、「自分の心の中の”ざわつき”を発見すること」だと思っている。”ざわつき”を明確に言葉で定義するのは難しいのだけど、「感情の振れ幅」だと解釈してもらって構わない。
好きな人のことを思うと胸がドキドキすることも、上司から理不尽に怒られてイラっとすることも、アフリカの飢餓の子どもたちを観て感じるあの何とも言えない気持ちも、全部が「ざわつき」だ。何だかスッキリしない、モヤモヤするこころの揺れ。何だか胸の奥に波風の立つ感じ。それが「ざわつき」。
おそらくあのおばちゃんは、自分のこころのざわつきに気づいたはずだ。「自分をもっと表現していいんだ」と思ったおばちゃんの人生は、これから変わるかもしれない。
「これはすごいことだ。これが演劇の力だ。」
そう確信した瞬間だった。
・・・
そのことを思い出した時に、同時に僕もあの大阪の地で「ざわついていた」ことに気づいた。
「いつもずっと誰かと比較しては苦しんできたけど、周りは関係なく、もっと自分を表現していいんだ」
僕自身がそれに気づいた瞬間だった。
周りを気にして、自分の才能を潰してしまう。
それはなんてもったいないことだろうと思った。
自分にしかできない仕事を見つける方法
さて、ここでまたあの質問に戻ろう。
「いったい自分は何者なのか?」
・プレゼン、スピーチ
・動画制作
・ライティング
・カウンセリング、ヒアリング
・ダイエット、スキンケア
・SEO
・コミュニケーション
これらのスキルは、自分を表現するツールでしかない。そのスキル自体がアイデンティティになることはありえない。では何がそのアイデンティティ=「自分は何者なのか」を確立するのか?
それを解決したのが、僕の場合はストーリーテリングの考え方だった。
「ストーリーテリング」とは、伝えたいメッセージを、印象的な体験談やエピソードを通して語ることで、聞き手に強く印象付ける手法のことを言う。
ストーリーはその人にしか語れないもの。それが仕事のアウトプットにつながれば、当然その仕事は自分にしかできない仕事、になる。
ストーリーテリングには「点と点を結ぶ」作業がある。スティーブ・ジョブスの「Connecting the dots」がそれだ。僕に当てはめた場合、これらのスキルがどのような線で結ばれるのか?
それが僕の場合は「こころのざわつきに気づいてもらうこと」という線だった。
自分が人前でプレゼンをするのも、誰かにスピーチの仕方を教えるのも、SEOをかけて何かの文章を書くのも、動画を制作するのも、痩せたい人をカウンセリングしアドバイスをするのも、
全てがその人の「こころのざわつきに気づいてもらう」ようなコミュニケーションをとるためのツールだったということだ。
有名大学を受験することをやめて、演技の道に進もうと思ったのも今思えば必然だったのかもしれない。
この「ざわつき」は日常生活の中で感じたとしても見過ごされてしまいがちなもの。その感情に振り回されることはあっても、どうしてその感情の揺れが起きたのか、真剣に考える機会はものすごく少ない。でもその「揺れ」にこそ、自分らしさが隠れている。
僕は大阪での経験を通して、そのことを身をもって知ることができた。
だからこそ、その重要性をありとあらゆるツールを使って、一人でも多くの人に気づいてもらうことを使命にしたらいいんじゃないか?
そう思えたのである。
そんなの結果的にこじつけただけじゃないの?と思われるかもしれない。しかし、人生におけるストーリーは、最初からクライマックスを描くことができない。過去に遡って編集することでしか、物語を描くこことがそもそもできないのだ。
しかし、今までの過去が一本の線で結ばれた時、そこにはストーリーが生まれ、未来へのシナリオすら描くことができる。その過去から現在、未来へと続いていく一本の線こそ、自分のアイデンティティであり、自分軸であり、ミッションやビジョンのようなものになりうるのだ。
その自分にしかない軸(=人生というストーリーから導き出された自分の価値観)を通じてアウトプットされるパフォーマンスは、自分にしかできない唯一のものである。
では、この自分軸を使って、どのようにTOP3%の人間になればいいのだろう?
誰でも簡単に1万に1人の人材になる方法
(画像出典:「藤原和博のよのなかnet」)
「藤原和博の必ず食える1%の人になる方法」という本がある。藤原和博さんは、リクルートで東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務めた人だ。
その著書の中で、藤原さんは「特定の分野で1万分の1の人材になるのではなく、2つの分野で1/100の人材になることができれば、その掛け合わせで(1/100×1/100=)1万分の1の人材になることができる」と説く。
この考え方に出会った時、まさに「特定の分野で1万分の1の人材」になろうともがいて自分にとっては目からウロコが落ちるような衝撃があった。
偏差60の人生を歩んできた僕は、正規分布で言えば、どの分野でも上位16%、つまり、およそ6人に1人の人材だったわけだ。
・プレゼン、スピーチ
・動画制作
・ライティング
・カウンセリング、ヒアリング
・ダイエット、スキンケア
・SEO
・コミュニケーション
僕の得意だと個人的には思えるスキルは全部で7つ。これらが全て6人に1人の実力だったら、それを掛け合わせるとどうなるか?
1/6×1/6×1/6×1/6×1/6×1/6×1/6=1/279,936 !!!
この7つのスキルひとつひとつはトップ1%の一流の技術でなくても、これらを全て持ち合わせている人は自分ぐらいしかいない。そう考えると、それぞれのスキルで周りとの競争をするよりも(それも大事ではあるが)全てを持ち合わせている自分を誇りに思うことができる。
「今まで積み上げてきたものは、何一つ無駄なことはなかった。全てがこの瞬間に掛け合わさるために、学んできたものだったんだ。」
僕は、スキルをいくつも持っている、という事実に対して、
「何をやっても中途半端な自分」から「スキルを掛け合わせて自分にしかできない仕事をできる自分」へと解釈を変えたのだ。
そうやって僕は、才能のなさを嘆いてきた自分の過去から、自分の軸を見つけ出し、自分の才能を見つけ出すことができたのだった。
◆◆◆
終わりに|自分の軸が見つからない人たちへ
「あの人みたいに能力と才能があったらなぁ」
「私は何をやっても中途半端な人間だから」
「自分はやりたいことが何なのか、よくわからない」
僕もそんな願望と挫折と不安とからスタートしました。これを読んでいるあなたも、もしかしたら同じような感情を抱えているかもしれません。結論から言うと、それらの感情は、あなたの人生のストーリーを見つめ直すことで、解決できるようになります。誰でも、です。
過去の嬉しかったこと、悔しかったこと、頑張ったこと、つらかったこと。いろんな体験をされてきましたよね。その時の「こころの揺れ」を思い出してみてください。
なぜその感情になったのか?
今の自分はその出来事をどう解釈しているのか?
全てが未来に活かせるとしたら、どう解釈しなおしたらいいのか?
そのプロセスを経ることによって、あなたの中にしかないあなたの軸があぶり出されてくるはずです。
あまりそんな感情の動くような体験をしたことがないな、と思う人も大丈夫です。これから作っていけばいいんです。その経験がなかったという「事実」が、未来のあなたの解釈によって、必ず線で結ばれる瞬間がやってきます。
だから「やっぱり私はダメなんだ」「うまくいかないんだ」なんて思わないでください。そしたらこの先の未来も全部ダメになり、うまくいかなくなってしまいます。
恩師の言葉をお借りして、あなたに届けたいことは
ということです。
そのことを、僕にしかできないことで伝えたくて、筆をとりました。
もしあなたの心がこの文章を読んで、少しでも「ざわついた」のなら、僕にとってこれほど嬉しいことはありません。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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