エストニアどうでしょう① タリンへ
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「あそこに見えるのが旧市街ですか?」
となりに座っていたエストニア人と思しき若者に尋ねました。
フィンランドのヘルシンキ・ヴァンター空港から、エストニアのタリン・レナルトメリ空港へ向かう飛行機の中です。
「通路側の僕からは窓の外がよく見えないけど、たぶん旧市街だと思うよ」と彼はとても控えめな様子で答えました。
腕に大きなタトゥーが入っていましたが、彼の声はとても優しげでした。
僕は今まで旅行も含めて海外に一人で行ったことは一度もありませんでした。
そもそも自分はどうしてエストニアに来ることになったんだっけ?
日本の外の広い世界を見たくなったから?
何か悩みがあってそこから逃げるため?
コツコツ勉強した英語を実際に活かしてみたかったから?
何か新しいチャンスを掴みたかったから?
そういったことを考えている間に地表がだんだん近づいてきました。
エストニアまで来た理由を挙げるとすれば、たくさんあったかもしれないし、本当は一つも無かったかもしれません。ここで何かワクワクするような事が待っているかもしれないし、待っていないかもしれません。だけど 喜劇王 チャーリー・チャップリンが言っていた言葉「意味を考えていたら始まらないよ。 人生ってのは欲望さ。」を思い出し「まあ、エストニアに行きたいというかすかな欲求があるから、意味なんてあとから着いてくるだろ」と半ば強引に自分を納得させ、気づけば勤めていた福祉施設を退社し、スーツケース片手に飛行機にのっていました。
大きな意味とか理由とかは思い当たらないけど、ほんの小さな灯火が心の片隅にまだくすぶっているとは感じていました。その「とろ火」のような熱源に動かされ、はるばる日本から8000キロも移動することになったのです。
そんなことを考えていると、もう地表が目前に迫ってきています。屋根と森と道路が見えます。ついに着陸用の滑走路が見えました。いよいよエストニアの首都 タリンに到着です。
一体ここで何が僕を待っているのでしょうか? 少なくとも日本とは違う何かが待ってはいるでしょう。
でも僕はそこまで期待しないようにしました。期待し過ぎると必ず現実との落差に落胆することになるからです。でもやっぱり少しは期待していました。そんな感じでタリンに着いたのは午後八時半、緯度の高い北欧ですが、そろそろ夕方が近づいてきていました。
夏のタリン旧市街 (世界遺産)
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