個人的憲法論(終章)

前話: 個人的憲法論(その2)

自民党改憲案について。

個人的憲法論の終章として「自民党改憲案」について私見を書いときます。

こちらで読めます。→日本国憲法改正草案

率直に言うと、びっくりしました。

え?こういう風に来るの?と。

もし僕が本当に憲法を変えたかったら、もう少し「狡猾」にやると思う。微妙に、どこが変わったのかあんまりわかりづらい感じで、するっと通る案で、、という風に。「そうやるべきだ」というわけではなくて「そうやるだろうな」と言うこと。

それを今回の改正草案のように「ガラッと変える」というのは予想外だった。

なぜ「ガラッと変える」草案を出したのか。

2つ想定している。

一つは「ドア・イン・ザ・フェイス」というテクニック。

これは「フット・イン・ザ・ドア」「ドア・イン・ザ・フェイス」という2つのテクニックから来ている。

「フット・イン・ザ・ドア」というのは例えば押し売りセールスマンが最初はつま先だけドアに挟んで、そのうち、体全体を入っていくというもので、「小さい要求を飲ませて、最後に目的の要求を飲ませる」というもの。

「ドア・イン・ザ・フェイス」はその逆。最初に無理難題を言う。(いきなりドアの中に顔を突っ込む)それが断られたらどんどん要求を下げていって、最後は小さくてもいいから要求を飲ませる、というもの。

つまり、「こんなのさすがに無理だろう!」と思わせるような草案を出して、「じゃ、ここは?こっちは?あ、それもダメ?じゃあ最後の最後、これだけはいいでしょ?」と落とし所を付ける、ということを考えているのではないか。

二つ目は「これでも通る」と思っているのではないか、ということ。

(正直ここ最近、僕は「あれ?もしかしてこれを作った人は『このくらいでも通っちゃうだろ』と思っているんじゃないか?」と本当に疑い出している。)

国会で3分の2取れば、発議が出来る。発議さえしちゃえば国民投票なんてまあ通るだろう、ていうか国民誰も草案なんて読まないよ、空気で賛成するんじゃない?と思っているのではないか。

我ながら非常に悲観的だと思っているけど、あながち間違いではないのではないか、とすら思う。

どちらにせよ、個人的憶測です。

悲観的ついでに言っておきますがこの草案はConstitutionではなく、聖徳太子の「十七条の憲法」に近いです。

例えば、第1章第三条2項。

"日本国民は、国旗及び国家を尊重しなければならない。”

これも一つの「義務」ですね。今の日本国憲法には3つしか無かった国民の義務(勤労、納税、教育)がこの草案ではぼんぼん増えている。ましてや「尊重」という曖昧な義務がついている。

もちろん僕は日の丸を国旗として認め、君が代を国家として認めている。個人としてはその二つを尊重する。しかしそれを国家が「尊重しろ」というのは違うと思う。

例えばアメリカでは「星条旗を焼いても罪に問われない」ということが法律で規定されている。もし草案が通れば、例えば、日の丸を持っていてどこかにぶつけたとしたら「尊重してない!憲法違反だ!」と言われてしまうかもしれない。君が代を歌ってても「声が小さい!尊重してたらもっと声が大きいはずだ!憲法違反だ!」となるかもしれない。

「そんなことなるわけない、考えすぎだ」?

過去の歴史上、そんなことなんてたくさんあったよ。

これが例えば「日本国民は国旗を焼いてはならない」ならまだ分かるんだよ、もちろんそんな憲法嫌だけど、憲法違反しないためには「焼かなければいい」ってだけでしょ?

だけど「尊重しなければならない」って「何を持って尊重というの?何をしたら(しなければ)尊重してないってことになるの?」が曖昧だから「怖い」んだよ。

ある人が国旗・国家を尊重しているかどうか、誰が決めるの?もしAさんが決めるとするなら、個人が合憲か違憲かを、個人が決める、ということになるじゃない。

それが「怖い」ね。

憲法は国が守るべき法律であり、国と国民の契約である。

最後のまとめにになるけど、改めて言うけど「憲法というのは国が守るべき法律であり、国と国民の契約」である。

国民に対して「国旗・国歌を尊重しなければならない」なんてことを言うのはそれこそ正に「仲良くしなさい、諍いを起こさないようにしなさい」ということが第一条だった「十七条の憲法」と変わりない。

「憲法改正して戦時中に逆戻りさせるな」とかそういうスローガンもあるけど、自民党草案って「飛鳥時代に逆戻り」ですよ、はっきり言って。

護憲派か改憲派か。

今の段階で僕は結論を出していない。ただ、一つだけ言えることは「この自民党憲法改正草案はまったく話にならない」ということ。これだけは言える。

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