それでもこひはこひ~ひでお物語~
秋はどこか人恋しい。前期が終わり、秋の休みの期間だった。
とくに何もすることもなくてボーっとしている日も多かった。
そんな秋の夜長、講座もなくて、ずっとあっていないみきと無性に会いたくなった。
そして、彼女の家まで行くことにした。
彼女は九州からでてきてひとりぐらしをしていた。
下宿の場所はなんとなく聞いていた。
そのなんとなくをたよりに、自転車を走らせた。
そしてまもなく彼女の居場所をみつけた・・・・。
ドアの前でずっとためらっていた。
知り合いではあるけれど、男を部屋に入れてくれるのだろうか。
いきなりの訪問だし、絶対変だよなあって自問自答していた。
だから、そのドアのチャイムを鳴らすのにそのあと2日かかった。
そして、最初の日から3日後にチャイムをならした。

彼女は当然ながらびっくりしていた。
「ちょっと近くまできたから~」なんてありきたりな嘘をついてとりつくろうひでお。
彼女はいぶかったけど、部屋に入らせてくれた。
中に入ってどんな話をしただろう。あまり覚えていない。
彼女はベッドにすわり、ひでおはベッドに寄りかかり、とくに目を合わせることなく座っていた。
テレビでもみてたのかな。そんなたわいもない時間がすぎて・・・・・

ひでおはみきに「好きだ」と告げた。
かなり前置きが長かった気もする。
女の子に告白をするなんてことは初めてだった。
こんなに緊張したことはなかったし、こんなに思い切ったことも初めてだった。
そして、少し泣いた。
そのあとのことはあまりおぼえていない。
返事をきいた覚えはない。
彼女といい関係になったのかというと、なっていない。
結局その後数回、突然訪問したりとか、クリスマスにプレゼントを渡したりとか、
といってもいなかったからポストに入れといたりとか、
なんだか、 変なやつに近かったかもしれない。
煙たがられることはなかったけど、結局ひでお少年はどうしたかったのか、
今でも疑問に思う。
その後、彼女はいつの間にか、大学の先輩と付き合っていて、卒業してすぐに結婚した。
あいかわらずなにかと中途半端なひでおだった。
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