ファイナンス入門 (18) ヘリコプターマネー

前話: ファイナンス入門 (17)EU何故ギリシャは残こり英国は離脱

参議院選挙で与党が勝利を収めた後、日本の株価は英国のEU離脱前の水準まで回復した。安倍ノミクスによる追加金融緩和に加えて大規模な財政の出動が期待された為だが、それに加えて「ヘリコプターマネー」の投下が欧米のメディアではまことしやかに予測されていた。

実はヘリコプターマネーの定義は余り明らかでないというのが実態。

最初の提唱者はマネタリストとして有名でノーベル経済学賞を受賞しているミルトン・フリードマン教授。 文字通りヘリコプターで空からお金をまくように通貨を供給して需要を促す策。

人によっては、ヘリコプターマネーは日銀が国債を直接引き受けて、その資金で政府が何の対価も無く商品券や給付金を国民に配る事を言うとするが、それに限らない。

既に行われている金融緩和との大きな違いは、金融緩和では民間金融機関が保有する国債などを買い取る形で資金を供給、マイナス金利にすることにより民間企業への融資を促して投資を引出そうとするのに対して、ヘリコプターマネーは政府が永久債を発行して日銀に引き受けをさせて自由になる資金を手にすること。永久債というと聞こえが良いが政府が日銀に出資してもらうようなもの。

前者では民間金融機関と融資を受ける民間企業の資金の使い道への判断が関与するので、採算性を度外視した無駄やリスクの高い投資は除外される。

しかもヘリコプターマネーは、政府が使い道を決められるし、日銀からの融資は金利を払う必要が無いだけでなく元本も永久に返す必要がない。合理的な使われ方がされる保証は無い。

今回、ヘリコプターマネーの導入が話題になった理由の一つは、バーナキン前FRB議長の来日。

バーナキン自身、フリードマン教授の弟子で、ヘリコプター・ベンとの異名も持つ。


ところが菅官房長官は間隙を入れずにヘリコプターマネーの導入は考えていないと否定。

ヘリコプターマネーの導入に政府が慎重な理由はこう考えると良いだろう。

いくらお金があっても将来について不安であれば、そのお金を今使わずに将来の為に取っておくだろう。商品券も日頃の買物に使われるのであれば需要を増やすことにはつながらない。

物の量が一定でお金の量が増えると物に対するお金の価値が減る。これがインフレ。

そして一旦始まったインフレは加速度がついてしまって一定の範囲に収めるのが難しく1970年代の様な高インフレに苦しむことになる。


黒田バツーカに続いてヘリコプターマネーの散布となると日本経済は文字通り薬漬けとなってしまう。

何よりも経済の体力を付ける根本的な方策が待たれる所以である。


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