【第12話】離れて暮らしていた父の介護のこと、死んだときのこと、そしてお金のこと。
少しずつ、進み始める
涙をこらえながら、電話に出る。
私
はい、ヨシザワです…
相談員さん
S病院相談員の○○です!先ほどは色々お話頂いてありがとうございました!
私
いえ、とんでもないです…
相談員さん
それでですね、江東区の施設に連絡したところ、空きがあるようなので、とりあえずご家族の方で先方に連絡して、施設見学を予約していただきたいと思いまして。今からお電話番号申し上げてよろしいですかね?
私
えっ、あっ、ちょっとまってください!
え、左手で傘さしてるじゃん。
右手で電話出てるじゃん。
メモとペン…どの手で持てばいいんすか!!!!
心の中でしか言えないヘタレな私。
すぐ近くにあったマンションの玄関口(軒先?)を少しだけお邪魔させてもらって、傘を置きカバンからメモとペンを取り出すことに成功した…。
ついでに会社にも、雨で諸々遅れていることを連絡。
少し気持ちを落ち着かせて、そのまま徒歩で駅前のエ○ブルに向かった。
大家さんと連絡が取れた
エ○ブルに到着し、事情を説明すると、すぐに調べてくれ
(担当の副店長さんがめっちゃいい人で、また少し泣きそうになった)
その結果…
毎月1回、大家さんが直接家賃を回収
という、物凄くアナログまたはレトロまたは下町情緒あふれる支払方法だった。
副店長さんが大家さんに電話をしてくれ、そのまま私に電話を代わってもらう。
事情とお詫びをしたところ、
大家さん
この間お伺いしたときに、いなかったから心配してたんですよ~。無事で良かった!
私
すみません、それで家賃のほうなんですけど、すぐに銀行振込しますので、口座情報を教えていただけますか?
大家さん
あら、そうしたら再来週にアパートに行くので、その時に直接って形でもいいかしら?
私
(直接お会いしてお詫びしたほうがいいしな…)はい、ではそちらでお願いできますでしょうか。
お互いの携帯番号も交換して、電話を切る。
副店長さんから、大家さんと直接解約の話をして問題ないです、と言っていただけたので
とにかくお礼をひたすらにして、エ○ブルを辞した。
すると、もう雨は小降りになっていた。
この日のことは今でも鮮明に覚えている。
時間への焦り、ひとつ先がどうなるか分からない不安、冬の雨の寒さ。
そんな状況で、出会う人すべてが優しくて、
そして、一歩、いや半歩だけど前に進めた日。
多分、自分が死ぬときまで、この日のことは忘れないと思う。
つづく
(全然構成とか考えずに書いてたら結構長編になりそうな予感…でもどれだけ長くなっても最後まで書きます)
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