【第16話】離れて暮らしていた父の介護のこと、死んだときのこと、そしてお金のこと。
退院の日
2014年4月10日。
父が老健での生活をスタートさせる日だ。
前回書いた通り、病院の相談員さんに介護タクシーを手配していただき
(病室の前まで運転手さんが車椅子を押して迎えにきてくれるのだ!)
当日、私達がすることは退院時の洋服の準備と私物の片付けと精算くらい。
…とは言っても、老健での生活用品を持っていたので荷物は大量だったけれど笑
看護師&ヘルパーさんに病衣から洋服に着替えさせてもらい、
介護タクシーの方が用意してくれた車椅子に父を座らせてもらう。
父からしてみれば、急に着替えさせられて、どこかに連れて行かれると不安なのだろう。
ほとんどしゃべらず、表情も固い。
何度も説明したんだけれども、理解したうえで不安なのか、ただ理解できないのか、そのあたりが私達には読み取れない。
大丈夫だよ、病院よりもっと広くて綺麗なところで過ごせるんだよ。
私達が全部手続きしてるから、心配ないんだよ。
何度も繰り返す。
車窓からの花見
そして、タクシーに乗る。
父は車椅子のまま、後方ドアからリフト?を使って乗車。
車椅子を固定して、準備OK。
車内スペースがあるため、私達も同乗させてもらう。
私は助手席に、姉は父の隣に。
行く途中、運転手さんが気を遣ってくれて
桜が咲いている道を通ってくれて、少しの間、停車してくれた。
もう、散りかけていたけれど、それでもとても綺麗だった。
私
ほら見える?桜、綺麗だねえ
やっぱり、父は軽く頷くだけだった。
思い返すと、これが父との最後の「花見」だった。
運転手さん、本当にありがとう。
あなたのおかげで、父と私達の思い出がひとつ、作れました。
つづく
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