【ヒッチハイク】東京 少しでも 運んで下さい
おばさんにガムテープの話を切り口にして
俺のことを聞こうと思っていたみたい
やっぱり仕事場であるトラックに
知らない人を乗せるというのは
慎重にならざるを得ないのだろう
問題なさそうだから乗せてくれたらしい
走り屋さんは昔から乗り物が好きで18歳からバイクを買って
愛知を今で言う暴走族みたいに走り回っていたそうです
235キロまで出したことがあるとかないとか
ぶっ飛んでますね
でも今の大型トラックはリミッターというのがついていて
95キロ以上はアクセル踏んでもスカスカなんだって
違法で改造してるのもあるけど
走り屋さんはそういうことはしないそうだ
今は愛する家族が第一の走り屋さんは
安全運転
法律遵守
事故に巻き込まれたことはあるけど
事故を自分から起こしたことは一度もないという
いろいろお話を聞かせてもらった
トラック業界の暗黙のルールとか
走り屋さんの子どもの話とかいろいろ
「疲れてたら寝てもいいぞ」
と言ってくださったんだけど運転してもらってるのに
寝るわけにはいかないので
「大丈夫です」
って言った
だけど気付いたら寝てました
すいません
「兄ちゃん、もうすぐ着くぞ」
厚木じゃなく鮎沢のパーキングで降ろしてもらうことになっていた
ここなら東京行きがたくさん停まっているし
もし失敗しても長距離バス用の出口があるから
一般道にも降りられるそうだ
俺はそんなことなんも知らなかったから
ただひたすらお礼を言ってトラックを降りた
別れ際に走り屋さんはチヨビタをくれた
愛情一本チヨビタ
ありがとうございました
8月6日 5日目
走り屋さんに降ろしてもらったときは
すでに12時を回っていた
眠い目をこすってまたダンボールを掲げる
東に行くトラックは東京の朝の通勤ラッシュに巻き込まれないように
夜中に出発するのだそうだ
トラックの運転手って本当に大変だね
でも人あんまりいないしポツンとパーキングの入り口で座っていて
入ってくる人たちに
「東京へ…」
みたいに話しかける感じ
だけどもう眠くてしゃーないから
食堂の椅子で軽く寝て
またヒッチハイク再開
これがたぶん最後のヒッチハイクになるんだよなぁ
とかしみじみ考えながら
トイレで出てくる人を待ち伏せしたり
↑あやしいよね
自販機の前で待ち伏せしたりしてた
↑あやしい
1時間くらいたっただろうか
食堂ぶらぶらして
肉まん旨そうだな
なんて思いながら眺めていたら
つなぎを着て首のタオルがめっちゃ似合う
いかにもトラックの運転手さんという感じのおじちゃんが声をかけてくれた
「兄ちゃん東京いくんなら乗せてってやるわ
俺はこれから群馬のほうに抜ける
まだ出発しないからこれでなんか飲んで待ってて」
とお金を渡してくれた
俺はめっちゃお礼言って
そして聞いた
「肉まんでもいいですか」
おじちゃんは
「腹へってるんかぁ」
と笑いながら快く許してくれた
何度もヒッチハイカーを乗せているらしい
ここではベテランさんと呼ばせてもらおう
ベテランさんは長距離で何十年も食べてて
沖縄以外全ての46都道府県に配達してるという
今日も九州から出てきたんだって
ベテランさんは笑顔が素敵なめっちゃ面倒見の良い方で
後で聞いたんだけど俺が肉まんをほおばってる間にも
新人さんの話しを聞いて相談にのっていたらしい
乗せてもらってからも
いろいろな話を聞かせてもらった
95キロしか出ないリミッターの話
ベテランさんはちょっとリミッターを細工しているから
110キロくらいは出せるらしい
でもこれをしないと寝ずに走っても
指定の時間に間に合わないということがあるというから
問題は深刻だ
あと新人社員がかわいそうだという話
今は誰でも会社入ったらすぐに一人前の仕事を任せられる
こんなんじゃ新人は大変だ
カーナビがあってもあれは今のところ完全じゃない
あれだけで仕事ができると思ったら大間違いだ
ゆっくり育てなきゃだめだ
それから
無差別殺人の話
「誰でも良かったなんて許せないだろ」
とトラックの中で声を荒げて話してた
なんか全ての言葉に心が入っていて
講演を聴いているようなそんな感じだった
俺はただそのいろいろな話にうなずくばかりだった
そんなこんな話してたらあっという間に
環八に出て成増の近くに降ろしてくれた
ありがとうございました
朝の4時ごろに駅について始発を待っていたら
駅のホームで始発を寝過ごして次の電車に乗った
終わり
恩返ししたいね
お世話になった人全員にもう一度会えるかどうかは
わからないけど
直接でなくてもできることはいくらでもあると思う
今僕の目の前の人に親切にすることでいつか僕に親切にしてくれた人にも
めぐりめぐって親切が届く
親切は連鎖する
いつもは
こういう日記は自分のノートだけに書いていた
人に見せることはなかった
だけど今回こうやって書いてみようと思ったのは
世の中にはこぉんなに素晴らしい大人が
たぁくさんいるんだよってことを
みんなに伝えたかったんだよね
そしてたくさんのありがとうを
伝えたかったんだ
お世話してくださった人ありがとう
心配してくれた人ありがとう
応援してくれた人ありがとう
アドバイスしてくれた人ありがとう
声をかけてくれた人ありがとう
道路を作ってくれた人ありがとう
水や食べ物ありがとう
…
……
読んでくれた人ありがとう
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