⑦私が「私に暴力を振るい続けた死にゆく母を笑顔で見送るべきか(長文です)」と知恵袋に書き込んだ者です。

前話: ⑥私が「私に暴力を振るい続けた死にゆく母を笑顔で見送るべきか(長文です)」と知恵袋に書き込んだ者です。

 初めての虐め

 あなたには今、居場所がありますか? 小学4年生になった私には居場所がありませんでした。畳一畳分、それより小さなちょっとした隙間でもいいから、安らげる居場所をどれだけ欲しかったことか。 


 仙台の街中から宮城県内、片田舎の小学校へ転校してきた私にとって、田舎の生活はとても息苦しいものだった。転校初日に立派に言えた自己紹介は、4年2組のいじめっ子たちの気に障ったようだ。

 転校してきてすぐは皆が物珍しさに群がって、私は一躍クラスの人気者に。楽しい学校生活の始まりだと思った。

 もともと勉強が好きでたくさん挙手したり、リーダーシップをとり人をまとめることが好きだった私の性格。前の学校では私に、クラスの皆が付いてきてくれた。だが、私のようなリーダーシップを取りたがる生徒は既に、新しい4年2組に一人いたのだ。私はその子に気づかなかった。

 その子の名前は今でも忘れない、「咲(さき)」。

 ピンクの丸眼鏡をしてプクプクふくよか。和田アキ子風ベリーショートな髪形に、いつもジーパンをリメイクしたようなデニム生地の膝丈スカートを履いていた。

 新しい学校に転校してきて2週間ほどは何事もなく、皆にチヤホヤされて楽しい学校生活を送っていた。ところがある朝、いつものように登校しクラスに入ると、皆の私に対する視線が明らかにいつもとは違うと感じた。

 私は元気に「おはよう!」と、昨日まで仲良く遊んでいたクラスメイトに挨拶したというのに、私が挨拶しても誰一人として「おはよう」と返してくれる人はいなかった。

 あの頃の幼い私は、すぐには状況を理解できなかった。

 家では家族に嫌われていようが、別にいいやと思った。だって、新しい学校は楽しいことでいっぱいなはずだから。家である嫌なことも、学校が楽しいから我慢できるんだから。

 

 学校のクラスメイトとは仲良くやっていける自信が、根拠のない自信が私にはあった。


 その日から1年間、私はクラス全員に無視され陰口をたたかれ続ける毎日だった。家でも学校でも、先生以外とは話さない生活。

 心の準備もしていなかったのに、急に虐められだした時は「世界が終わった」と思った。私はこのクラスに、この学校にも家にも、必要のない子供なんだ。

 あまりにも急にクラスメイトの態度が180度変わったので私は焦り、何人かに「私が何をしたというの? 悪いことしたんだったら謝るから、ごめんね」と話しかけてみた。

 話しかけた内の一人が教えてくれた話は、

 「あんた、クラスのみんなの悪口言ってたんだってね。咲ちゃんが言ってたよ。咲ちゃんがみんなに、あんたを無視するように言ってるんだよ。あんたと話してるのバレると私も虐められる。二度と話しかけないでね。」

 転校してきて間もない、クラスメイトの顔と名前も覚えきれていない私が、どうやって皆の悪口が言えただろう?

 皆に無視され続けている間、私は咲ちゃんに何をしたのだろうと一生懸命記憶の中、原因探し。

 探しても探しても、どこにも原因が見つからない。後々わかったことは、咲は「転校生」という身分でクラスのリーダー的存在になろうとしていた私のことを、気に食わなかったのだ。


 「あいつ、臭いよな。ずっと風呂入ってないんだろ?」

 「仙台から転校してきたって、都会から来ましたって自慢だよな」

 「顔も体も気持ち悪いよな。転校してくんなっての」

 「クセー、臭いんですけど。どっかいってくれませんか~」


 学校での虐めに対する免疫力が無かった私は、聞こえてくる悪口を聞こえないフリするくらいしかできなかった。

 「平気ですよ。痛くもかゆくもないですよ。」そんな態度を貫きつつ、心はボロボロだった。

 それでも、クラスメイトと交わらないといけない時がある。「遠足」だ。

 遠足では3~5人のグループになって、弁当を一緒に食べなくてはいけない。

 クラスで総スカンを食らっている私は当然、いつまでもどのグループにも入れないのだ。そんな私を見かねて、担任の先生が無理やり「及川をこのグループに入れてやってくれ」なんて、すでに出来上がってる仲良しグループに聞く。そのグループの子たちは、先生の頼みなので嫌と言えずに私を入れてくれる。

 それからが地獄だ。

 私はグループに入れてもらえたのもつかの間、「何で入ってくるんだよ、クズ人間。どっか行けや。てか、死ねや。」なんて罵声を浴びせられるのだ。体育座りをして弁当を食べていると、後ろからグループの皆に背中を殴られるわ、蹴られるわ。

 先生からは見えないように。

 先生の死角となる場所では、グループの皆が私の背中を上手に交互に蹴れるよう、フォーメーションができている。今考えると、クソガキどもは変なところで頭が切れるよう。


 ただ、あの頃の私には地獄のような日々だった。

 田んぼに四方を囲まれた、田舎の小学校での生活。

 秋には黄金の稲穂の絨毯を一望できる、小学校の屋上。

 私にはずっと遠く、山のふもとまで、灰色にしか見えなかった。



 

p.s 最後にこのストーリーを更新してから、また1年以上過ぎました。

時がたつのはとても早くて、自分は前進しているようで後退しているようで、何だかとても怖くなる時があります。 

 このノンフィクションを書き始めたころは「誰も読んでくれないだろう」と思っていましたが、今でもたまに「詳しく聞きたい」と言ってくださる方がいて、私もまた続きを少しずつ書こうと思いました。

 この話はまだまだ始まりで、後半はちょっと、非現実的な話になります(が、ノンフィクションです)。海外に飛び出したりDVや薬物なんて話も出てきます。※私が薬中になったわけではありません。

 死にかけた事故の話やホームレスになったことも、私の人生を描く上で触れなければいけない事柄です。

 そして私は今、本当ならどこかの会社の社長にでもなって大成功してればカッコいいのですが、そんな華やかな人生は送っておりません。しばらくの間は多忙なのですが、時間のある夜にちょこちょこ、またストーリーを書き足していきたいと思いますので、興味を持っていただけたら/暇つぶしに読んでいただけたら嬉しいです。

 ここまで、お読みいただきましてありがとうございます。


 


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