バランスの薔薇②「出逢い」

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俺は、ただ何かに熱くなれるものを追求している毎日だった。

本気でぶつかりたい。本気で人と関わりたい。話がしたい。そんなことを思っていた。
俺の名前は、輝樹。
Gメンでいつもドッキリの仕掛け人をやらされる、ただの声のデカい男だ。
子供の頃は特に目立つタイプではなかった。友達も多いワケでもない。世の中の大人がいう言葉には耳も傾けたくない。話もしたくない。
小学生4年生の時に父親が自分でやっていたメダカの事業に失敗して、家に借金だけを残して蒸発してしまい、家庭内はめちゃくちゃだ。メダカを繁盛させて海外に輸出をすると言った設備投資で何千万円も投資して失敗した単純バカなオヤジだ。そんなオヤジの血が少しでも自分の身体に通ってると思うだけでゾッとする。 
そんな無茶苦茶なバカ父親を見て育った俺だから、大人の言葉なんて信じないと決め、成長してきたのだと思う。
そんな事を考えながら過ごした10代の学生時代だった。
中学時代には、いつの間にか僕は不良のグループと遊ぶメンバーに入っていた。
別に不良ではないけれど、面白くない日々の生活に反抗的な精神を持った生き方をしている人達がカッコよく見えた。
周りに言われる事なんて気にせず自分の意見、行動をそのままストレートに表現して、毎日を生きているヤンキー達を見ていて、俺もそんな仲間に入りたいと思った。俺にはそんなそんな度胸はないが、ヤンキーのメンバーといれば俺自身も強くなれる気がするのだ。
いわるゆる憧れというのだろうか。
俺は高校を卒業したら、近くの町工場の仕事についた。車の部品を作る誰でも出来る流作業の仕事だ。家も母子家庭だし、親父の借金もあり、生活は苦しかった。そんな豊かな暮らしでなかった。直ぐにでもお金が欲しかった。大学に進学なんて、これ以上勉強するのはごめんだ。勉強してどうなるの?とにかく俺はお金が欲しかったのだ。
しかし、ヤンキー仲間と違って、度胸や根性もない俺は仕事が続かなかった。
工場の仕事、不動産の営業、コンビニのパート、工事現場の警備員など様々な仕事を転々とした。転職の理由は、うざい上司がいたり、給料が安かったりと様々で特に決まった理由はない。ただ単に面白くなかった。でもお金が必要だから働いていた。ただそれだけだった。
職を転々と5年ほど変え続け、23歳の時に勤めたスポーツショップの販売の仕事が今までにないとても楽しい職場だった。
肉体労働と違って、夏もエアコンが効いた店内で涼しく仕事が出来る。ただ喋っている所でお金がもらえるなんて楽勝だろうと思ってた。趣味でやっていたスケボーの用具も揃ってて、最高の環境だった。愛用していたデッキは、ハードコアデッキと言われているBAKER。ハードコアな生き方に憧れる俺にとってぴったりなデッキだ。
その店の店長に山口さんという人がいた。俺にスケボー、サーフィンのことなどはたくさん教えてくれた大好きな店長だ。
12歳年上の35歳で結婚もしており、嫁も3歳の子供もいるが、休みの日も家族と一緒にサーフキャンプで海へ行ったり、なんか生き方自体がカッコいい人だった。今までに出会ったことのない人種のタイプで俺は山口さんに、強く憧れを持っていた。
そんなお店で働きながら、仕事終わってからの深夜にGメンのみんなと飲み遊んだりする毎日を過ごしていた。

3年くらい働き始めた頃にそのスポーツショップで、俺は運命的な出逢いがあった。
店長の山口さんのサーフィン仲間の後輩の友達の友達で、ユカリという1人の女性と出会った。年齢は俺と同じ歳で背も160cmくらいあり、細っそりして健康的な肌色で笑顔がとても印象的な女性だった。
初めて出会った時、俺の脳天にカミナリが直撃したかのような衝撃だった。ちなみにカミナリが実際落ちてきた経験はない。
初めて声をかけられた時は、トイレの場所を聞かれたのだが、ユカリの綺麗さに動揺して更衣室の場所を案内してしまった程だ。
ユカリはすぐ笑う子で、高らかなその笑い声が俺の心に響く。ユカリが笑えば笑うほど俺の心は強く鼓動をうつのだ。まるで動くAIDだ。
今まで人と真剣に付き合った事のない俺が、初めてこの人を大切にしたいと思えた瞬間だった。
初めて誰かと本気で関わりたいと思える人と出会ったのだ。
人と本気で関わること、自分の内面をさらけ出す事が苦手だった俺にとって、ひょっとしたらこの人には、全てを丸裸の自分を見せる事が出来るかもしれない。
そう思えるような人だった。
「心を裸にする」というメンタルブロックが解けた気がした瞬間だった。



※このストーリーは実話を元にしたフィクションです。登場人物、場所などは一切関係ありませんり


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