バランスの薔薇③「何気ない生活」
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いつもGメン(ギリギリメンバー)のドッキリ計画を立てるのは、僕マコトだ。
今回は輝樹が来月誕生日ということで、少し早めのドッキリ計画を考えた。
前回、輝樹は強盗役をやってたから、強盗だとすぐバレてしまいそうなので、もっとぶっ飛んな計画を立てる事にした。
今回の作戦は「バイブマン強盗」と名付けた。いかにも怪しい名前だが、内容は電動バイブを持った不審者が男を襲いまくっているという情報を流し、輝樹が働いている店にバイブマンを強盗させに行くといった内容だ。
今思えばとんでもなく意味の分からない話だ。
Gメンのみんなは、面白そうだね!やろやろ!と軽いノリ。
決行日1週間前から輝樹を信じ込ませる為に行動を開始した。当時流行っていたSNSのmixiで事前バイブマン事件が近所で発生したという内容を書き込む。もちろん、そんな事件はないが輝樹に信じ込ませる為だ。
夜中に裸にエプロン姿で、サングラスにマスクを被った男が、バイブを持って男を強姦するという事件が起きていると言った内容。
いろんな意味で怖すぎる。
今回は、様々な人を巻き込めば信頼度も増えると思い、最近、輝樹が楽しそうに働いてるスポーツショップの人達も巻きこむ事にした。
そこの店長の山口さんという人は、とてもノリよく面白い人で、そういったドッキリを輝樹に仕掛けたいんです!と言ったことを伝えると、山口さんは快く承諾してくれた
「それだったら、うちのお店の閉店時間にバイブマンが強盗しにくるって作戦にしよーよ!輝樹が最近気になってる、ユカリちゃんも誘っておくよ。はははー!」
山口さんの心の広い考えで、輝樹の職場に強盗に行く計画になった。
僕らのドッキリに失敗の言葉はない。
決行日までに職場で山口さんも輝樹にバイブマン事件ってのが最近この辺りで起きて、超怖いねーって話を吹き込んでくれた。
決行当日、輝樹は仕事終わりに山口さんと、ユカリちゃん、そして僕たちGメンのみんなと飲み会をしようって予定を立てた
全て山口さんの言葉のリードでそういう流れにしてくれたのだ。
閉店後に僕はスポーツショップに訪れた。
あいにくにも雨が強く降るとても暗い夜だった
「お、マコちゃん!おせーよ!仕事疲れたから、早くみんなでパーっと飲もうぜ!」
とテンションマックスの輝樹。これからバイブマンが来ることも知らずに。
そこにユカリちゃんがいた。とても綺麗な子でクスクス横で笑っていた。どうやら嘘がつけない子らしい。輝樹に何か怪しまれるんじゃないかとヒヤヒヤした。
僕は、「おい、すぐそこでパトカーすっげー止まっててさ、何か事件あったのかなー。。。もしかして、今、このへんで起きてるバイブマン現れたかもな」
輝樹はハッとした顔をして
「バイブマンか!もし、この店に現れたら俺がケツを突き出して、みんなを守ってやるぜ!」
輝樹はユカリちゃんがいた効果があるのか、いつもより調子が良い。
山口さんは、その言葉を聞いててクスクス笑っていた。
Gメンの他のメンバー2人にバイブマン役をやらせた。100均で買ってきたエプロン、サングラス、マスクを裸で着させて、バイブを準備した。バイブ20cmくらいはあるであろう大きめのイボイボが付いたタイプだ。
今回の作戦は、スポーツショップのショーウィンドウ越しにバイブマンを立たせて、店から逃げないよう入口にもバイブマンを立たせるという内容だ。
閉店時間後の掃除を終え、山口さんが「よし、そろそろみんなでパーっと飲みに行くか!」のセリフを合図に、バイブマン2人に「go」のメールを送った。
「おい!おい!窓んとこに誰かいるぞ!!」
そこには、強い雨の中、ビシャビシャに濡れながら大きなバイブを持った裸エプロンのサングラス男だ。
輝樹は、叫んだ
「お、おい!おいおいおいおいおい!!あれバイブマンじゃね!やべぇ!鍵閉めろっ!」
輝樹は完全にビビっていた。さっきまでみんなを守るっていった輝樹が。
猛ダッシュで輝樹は入口の鍵を閉めに走った。
すると、「うぅぅうあぁぁぁぁあぁぁーーー!!」輝樹の悲鳴だ。
そう、もう1人のスタンバイしていたバイブマンとガチあったのだ。
輝樹は、バイブマンに背中を向けうずくまって震えていた。
「ちょ、ちょ、なんやて!おい!おぃ!」
もう店内は大爆笑に変わった。
山口さんも、ユカリちゃんも大笑いだ。
そのみんなが笑っている様子をみて、ハッと気づき輝樹は「おいーーー、これもドッキリかよー!!」
いつのまにか雨も止み、静かな夜に僕らの笑い声は響いた。
みんなを守る正義感はあるが、いざとなったらビビって逃げる男というレッテルが、輝樹につけられた日だった。
ユカリちゃんも、そんな姿をみて大声出して笑ってた。僕ら初対面のユカリちゃんに対して何やってんのって思ったが、楽しんでくれたから良しとした。心の距離が確実に近づいた。
「バイブマンなんて勘弁してくれよぉ〜」
そんな何気ない夜を、記憶に残る夜にする為にドッキリ計画は最高に面白かった。
輝樹は、僕マコトへの復習をこの時に誓ったのだ。
※このストーリーは実話を元にしたフィクションです。実際の登場人物、場所などは関係ありません。
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