世界47カ国女子バックパッカーができるまで(7)
お金で悩む
まず、私はバイト代を半分貯金することから始めた。
バイト先は大学前にある、香港料理を出す喫茶店。週に3回くらい、
大学の授業のシフトをうまく組んで、昼間の3~4時間ウェイトレスとして働いていた。
時給700円。それだとどう計算しても、月に3万円くらいにしかならない。試しにオーナーに聞いてみた。
ワンマンオーナーの笑顔が、ちょっとひきつった気がした。
あ、ダメなんだな・・直感でそう感じた。
大学前にある学生街の一角で、学生向きに低価格のランチを提供するお店にとっては、無理というのも当然だった。
ただ私の頭の中には、いつもあの日の説明会の映像がちらついていた。350万円という気の遠くなるような金額を、どうやったら自分に何とかできるっていうのだろう。
悶々とした日々が数週間続いた。
そんなある日、市内に出ようと電車に乗ろうとして駅に向かうと、いつもは素通りするはずのフリーペーパーラックに目がいった。私の目は吸い込まれるようにして、その縦長の冊子の表紙に書かれた文字を追っていた。
『高時給保証!!!楽しく簡単にアルバイト!』
冊子の表紙にはパステルカラーのかわいい女の子キャラが描かれ、私に向かってさあ、手にとりなさいと言っているように思えた。市内行きあがりの電車が頭上のホームに到着する音がしたが私は駅の地下に突っ立ったままそれを手にとった。パラパラと中をめくるとそこにはカラーで綺麗な広告が無数に載っていて、実際にその高時給で働き大金を手に入れた女の子の写真と感想が掲載されていた。
『誰でも簡単にできるマッサージ』
『研修制度あり!』
『最低時給保証!』
『アリバイ会社完備!』
最後のフレーズに若干、違和感を感じたのだが目は体験談を追っていた。
『一カ月で50万円を手に入れて、人生変わりました!』
『お金で悩まなくなりました!』
お金で悩まなくなる・・なんて、素敵なフレーズだろう。
そのフレーズは数週間、そのことばかり考えていた私の頭をガンと金づちで殴ったような衝撃だった。
あの日留学説明会に行ったときのように、私の親指は何かに導かれるように携帯電話でその電話番号をプッシュしていた。
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