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16/9/16

世界47カ国女子バックパッカーができるまで(8)

Image by Olia Gozha

知らない世界

私は18歳まで、親元で大事に育てられたので世の中の裏側なんて知る機会もなかった。

裏側っていうのは、俗にいう夜の世界。

何も知らない小娘が電話をした先には、そんな裏側の世界が待っていたのだった。


待ち合わせの心斎橋の駅前まで来ると、私は手鏡で自分の化粧が崩れていないか確かめた。

来ていた白いギャザースカートを、埃もついていないのに両手ではたく。面接だからスーツなのかと思ったが、電話口の相手はあっさりと『いや、フツーの恰好でいいですよ』なんて言ったのでいつもの服装でやってきたのだ。それでも相手に悪印象を与えないよう、なるべく身なりをいい状態にしておこうと思った。

そうこうしているうちに待ち合わせの13時を数分過ぎ、一人の髪の毛を茶色に染めたお兄さんがひょこっと現れた。

お兄さん「あ、ケイシーさんですか??」

ケイシー「は、はいっ・・」

待ち合わせ場所に来た男性があまりにカジュアルだったのと、岡田准一に似たイケメンだったので、私は

恥ずかしくなってついうつむいてしまった。

お兄さん「じゃあ、早速面接に行きましょう」

爽やかなお兄さんは、ただのおつかいだった。

面接会場は、他にあるのだ。私は気持ちを引き締めた。


お兄さんに連れられてゆくと、ある国道沿いの雑居ビルに通された。ビルの6階にあがると、入口には小ぎれいな植木が飾られており白を基調にしたオフィスに通された。私はオフィスの中にあるいくつものパーテーション個室のうちのひとつに通された。

お兄さん「ここで、待っててくれるかな?」

お兄さんが去ってゆくと、今度は背の低い頭の剥げかかったおじさんが登場した。

彼は座っている私の頭からつま先までを一通り眺めると、言った。

おじさん「うん、合格!」

正直言って、あまり言い気持ちはしなかった。この仕事って、私の外見だけで決まるものなの・・?若かった私は、それでも留学費用のことを思い出してぐっと堪えた。

お金を手に入れるためには、ガマンしなくてはならないこともきっと世の中にはあるだろう。


彼はそれから、よく理解のできない説明を始めた。

この仕事は接客業で、お客をもてなす気持ちが一番だとか、私のできる範囲だとか、アリバイは必要なのかとか。


正直いって、田舎育ちの私の頭には接客業というと自分のやっている喫茶店のウェイトレスと同等のものくらいにしか、考えてなかったのだ。


一通り、ちんぷんかんぷんな説明が終わり、私に提示された時給は1時間7800円。自分のバイトの給与時給780円と比べると、ゆうに10倍だった。これなら留学できる!私の心はわくわくと弾んだ。その後、どんなことが待っているのかさえも知らずに・・・



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